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一石三鳥!!国も推進する「ウェルネスツーリズム」とは?

こんにちは。新通観光プロモーション戦略室です。
今回は、注目のウェルネスツーリズムです。
日本の問題を解決する救世主!一石三鳥のウェルネスツーリズムとは一体どんなものなのでしょうか。概要をまとめてみました。

ウェルネスツーリズムとは?

「ウェルネスツーリズム」ってここ数年よく見かけるワードですね。
新しい旅のスタイルとして、様々な取組が進んでいます。
大きな展示会も2023年5月に「第1回国際ウェルネスツーリズムEXPO」が開催され、2025年6月に第3回が開催される予定です。

でも、ヘルスツーリズムとか、リトリート、ウェルビーイングとか出てきて、何が違うのか、、、
ではないですか?
定義には色々とあるようですが、書かれているものを見ると、だいたいがこんな感じです。

ウェルネスツーリズムとは、身体的だけでなく心理的な側面も含めて、健康を多角的に捉えて、精神や身体などを健康的に保ち、自分自身の人生を豊かにする旅行。

それに対してヘルスツーリズムとは、医学的なアプローチを重視して、さまざまな療法や医療サービスを通し、身体的な健康増進を目的とする旅行。

そして、リトリートとは、日常から離れて一定期間を過ごし、仕事や人間関係で疲れた心や体を癒す過ごし、いつもと違った体験でリフレッシュすること。

ウェルビーイングは、身体だけではなく精神的な健康や幸福も含めて豊かな状態を追及する旅行で、身体やこころの健康増進、文化継承、環境保全など全体的な豊かさを目的としたもの。

といったところです。



国連世界観光機関(UNWTO)「ヘルスツーリズムの考察」では、ヘルスツーリズムをこう定義しています。
観光(及び旅行)は、ウェルビーイングの創造や改善に貢献できる活動である。ヘルスツーリズムとは、個人のニーズを満たし、環境や社会の中で個人としてより良く機能する能力を高める医療やウェルネスに基づいた活動を通じて、身体的健康、精神的健康に貢献することを主な動機とした観光の一種。ヘルスツーリズムは、ウェルネスツーリズムとメディカルツーリズムの総称である。

定義と違いは微妙ではあるものの、広くウェルネスツーリズムとして、その中にヘルスツーリズムやメディカルツーリズムがあって、さらにリトリートなどの要素も含まれているということでしょうか。要は身体的・精神的な健康を促進する旅行や体験を通して、幸福で豊かな生活・社会につなげましょう!ということなんだと思います。まとめすぎですか。笑

ウェルネスツーリズムが注目される理由


ではなぜ、ここまでウェルネスツーリズムが注目されているのでしょうか?

まずはビジネス的側面として、今後の成長産業と考えられていることだと思います。
ウェルネスツーリズムを含むヘルスツーリズムの市場規模を経済産業省が公表していて、2023年3月24日有限責任監査法人トーマツの報告書「令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業(国内外での健康経営の普及促進に係る調査)」によると、健康志向旅行・ヘルスツーリズムの市場規模は、2021年3兆1,050億円、2050年12兆6,946億円と推計しています。
非常に大きな市場になりそうですね。

そして、理由として大きいのは日本が抱える健康長寿と医療費削減の課題です。

まず、日本の高齢化の現状はどうなっているのでしょうか。
日本の総人口は2010年から減少傾向にありますが、65歳以上人口は増加、今後も増加する見通しです。総人口に対する65歳以上の%は、1970年代までは1ケタだったのが、2022年で29%、2040年には35%に達する見込みです。

出典:令和4年9月18日総務省統計局統計トピックス1.高齢者の人口

次に国民医療費を見てみましょう。
高齢者が増加しているのですから、きっと医療費も増大しているだろうと予想できましたが、案の定、増え続けています。というか、かなり急激に増えてますよね。

出典:令和6年10月11日厚生労働省「令和4(2022)年度 国民医療費の概況」

総人口が減って、高齢者が増えて、医療費も増大、これはかなりまずい状況だと、普通に考えればわかります。

今度は日本人の寿命を見てみましょう。世界でもトップクラスの長寿国日本。
寿命はどのように推移しているのかと見てみたら、今でも寿命は延び続けているんですね。
令和元年で女性の平均寿命はなんと87歳!!素晴らしいです。
寿命が延びるのよいことですが、それだけ医療費がかかってくるということですよね。

出典:令和3年12月20日厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」

そして、ここがポイントですが、平均寿命と健康寿命の差が大きいんですね。
男性で8.73歳、女性で12.07歳、年齢分だけ医療費や介護費がかかってくるわけです。
つまり、この健康寿命を少しでも平均寿命に近づければ、それだけで医療費や介護費が抑制できるわけですね。

一石三鳥のヘルスツーリズム


ここで登場するのが「ヘルスツーリズム」。

健康寿命を延ばしていくことで、医療費や介護費が年々増えていくのを少しでも抑えていくことが重要になるわけです。
そこで注目されるのがヘルスツーリズムで、健康長寿による医療費抑制だけでなく、関連するビジネス市場の創出や雇用の拡大、そして最終的にはツアーや体験プログらラムなどを通してもたらされる地方の活性化や地方創生と、日本の課題に一石三鳥な期待がされているわけです。

2013年に経済政策(アベノミクス)の「第三の矢」である成長戦略に当たる「日本再興戦略」は 戦略市場創造プランの筆頭に「健康寿命の延伸」をあげており、その後、経済産業省「健康寿命延伸産業創出推進事業」の一環として誕生した「ヘルスツーリズム認証制度」が2018年にスタートしたのです。

ヘルスツーリズム認証制度はヘルスツーリズム認証委員会が、法人格を有する事業体(プログラム提供事業者)が申請して、認証基準に対する適合性の評価を実施しています。
提供される側は、品質を保証された認証プログラムを体験することができ、提供する側にとっては、サービスの品質保証となり、国内や海外の旅行者に有効なPRにもなります。

認証プログラムにはどんなものがあるのでしょうか。

認証プログラムは、北は北海道、南は沖縄と全国で40以上のプログラムが認証されています。
いくつか紹介しますね。

上山型温泉クアオルト

「クアオルト」とは、ドイツ語で「健康保養地・療養地」の意味。ドイツで心臓のリハビリや高血圧の治療として実施される運動療法「気候性地形療法」を取り入れた医科学的根拠に基づく「頑張らないで楽しく運動効果を高める”クアオルト健康ウォーキング」。

DAZAI健康トレイル

一般社団法人かなぎ元気村では、日本三大美林・青森ひば林と近代化遺産・津軽森林鉄道軌道跡を歩き、ドイツで親しまれている気候療法のノウハウを取り入れた「DAZAI健康トレイル」に取り組んでいます。

小松カントリークラブ

ゴルフは生涯スポーツとよく言われてシニアの方も楽しんでいます。活動量計を装着してラウンドしたり、個別最適歩行を体験したり、ゴルフによって生涯健康を維持することを目的としたプログラム。ゴルフに関するプログラムとしては、現在唯一のヘルスツーリズムプログラムとなっています。

ヘルスツーリズム認証にはエビデンス検証などのハードルはありますが、地域でヘルスツーリズム認証されることは大きなメリットとなりますので、挑戦してみてもよいのではないでしょうか。

自然・山・温泉・食と地域にはウェルネスツーリズムの資源が豊富


ヘルスツーリズムは認証制度があるが、ウェルネスツーリズムとしては、今のところそういったものはないようです。
ウェルネスツーリズムのプロデューサー養成講座などの専門家教育・研修も始まったばかりといった状況です。

しかし、ウェルネスツーリズムは広義であると理解して、自然散策、ヨガ、瞑想、フィットネス、スパ、食、レクリエーション、交流などを通して、地域の自然に触れ、心と身体をリフレッシュし、明日への活力を得る旅とすると、日本にはウェルネスツーリズムの資源が非常にたくさんあると考えられます。
日本全国にある温泉をはじめ、自然や山などの様々なフィールド、伝統的な郷土料理、これらは全てウェルネスにつながる観光資源と言えます。特に日本は温泉天国!これを活用しない手はないですね。各地域の特徴やストーリーを活かして、様々なプログラムが開発されると素晴らしいと思います。


地域の資源やストーリーをうまく活用した、面白いと思った事例をあげてみました。

星野リゾートが注力するウェルネスな旅

CREA WEBに星野リゾートが力を注ぐウェルネスな旅が紹介されています。様々な地域の様々なフィールドで施設を展開する星野リゾートならではの、地域の資源を活かしたバラエティに富んだヘルスコンシャスなステイが用意されています。

沖縄のプロジェクト
ブルーゾーン沖縄ウェルネス・ステイ

ブルーゾーンとはイタリアのサルデーニャ島、米国カリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカのニコヤ半島、ギリシャのイカリア島、沖縄の大宜味村の世界5大長寿地域のこと。沖縄の魅力と長寿の秘訣を融合したウェルネスツーリズムです。
(PRTIMES紹介記事)

名古屋発!都市型ウェルネスツーリズム

名古屋市は、サウナの聖地と言われていて、美容・健康にまつわる観光コンテンツが潜在的に多くあるとのこと。コンテンツを発掘し、名古屋への旅の目的としてPRする、都市型のウェルネスツーリズムという視点が面白いですね。
(PRTIMES紹介記事)

弊社でも、ちょっと昔になりますが、ウェルネスツーリズムに携わったことがあります。
復興庁の事業で、東北へのインバウンド誘客にむけて、東北の温泉地で新しい湯治のスタイルを楽しんでもらう「Japan Tohoku New Toji Style」という事業を旅行会社さん他のコンソーシアムで、企画からWEBサイト作成、ファムツアー、プロモーションとやらせていただきました。先ほど紹介したかみのやま温泉のクアオルトも盛り込んでいます。

最後に

注目のウェルネスツーリズム、様々な視点やアイデアで、地域の新しい武器になっていきそうですね。
しかし、個人的な心配なのですが、もともと健康長寿が一番の目的なので、各地のウェルネスツーリズムのプログラムにシニアの方々がたくさん参加して、体と心の健康促進を図ってほしいですが、個人旅行へのハードルやITリテラシーの問題、旅行代金の高騰なども含めて、なかなかシニアの方が現地に行って参加できない側面もあったりするのかなと思います。
パッケージツアーで参加できたり、地域や近隣の方が気軽に参加できたり、そんなウェルネスツーリズムが増えたら良いなと感じています。

新通観光プロモーション戦略室では、全国各地の事業やプロモーションのお手伝いさせていただいております。

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