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「ガストロノミーツーリズム」とは?(前編)

ガストロノミーツーリズムの意味

 観光業界で最近よく耳にする「ガストロノミー」や「ガストロノミーツーリズム」。観光庁も先日「地域一体型ガストロノミーツーリズムの推進事業」の公募を出したりと、かなり力を入れていく様子です。でも実際には、どういうものかよくわからない方が多いのではないでしょうか。

 フランス語で「ガストロノミー」は美食学と訳されることが多く、食や食文化に関する総合的学問体系的のことを言うらしいです。また、フランスでガストロノミーレストランとは、お祝いや旅先などの特別な時に行く”事前に予約が必要な格式高いレストラン”をさす言葉とのこと。
 それで日本ではガストロノミーと言うと美食や高級なイメージを持たれているのではないでしょうか。

 観光庁のサイトではガストロノミーツーリズムを「その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、その土地の食文化に触れることを目的としたツーリズム」であり、地域の伝統や多様性をサポートするだけでなく、文化の発信、地方経済の発展、持続可能な観光の実現等にも資するものと書かれています。
 つまり、フランスと日本ではガストロノミーの意味合いが少し違っているように思います。


サン・セバスチャン

ガストロノミーツーリズムと言えば「サン・セバスチャン」

 ガストロノミーと言うと必ず名前が上がる「サン・セバスチャン」は、スペイン北部のバスク地方にある「ビスケー湾の真珠」と称される小さな街です。しかし、世界から観光客が集まる世界一の美食の街と言われています。
 10年ほどで美食の町としてのイメージが定着したようですが、なぜそうなったのかは、いくつかの理由があるとのことです…

  1. 平方メートルあたりのミシュラン星の獲得数で1位

  2. 弟子制度の廃止と料理レシピ・調理法のオープン化

  3. 豊富な食材と地産地消

  4. 「美食倶楽部」という料理サークルの存在

  5. 素晴らしい料理学校や珍しい4年生の料理大学など

  6. 旧市街のバルめぐりの文化

 これらの要素がうまく絡み合って、世界一の美食の街がつくられたんですね。日本でもサン・セバスチャンを参考に様々な地域が取り組んでいるようです。

ローカルガストロノミー

 日本各地でローカルガストロノミーを標榜するレストランやデスティネーションレストラン、オーベルジュといった地域に根差したレストランが人気です。北海道フレンチの「ル・ゴロワ フラノ」や庄内イタリアンの「アル・ケッチャーノ」、栃木フレンチの「オトワ レストラン」といった有名なお店だけでなく、さまざまな新しいレストランができています。

 SDGsやサスティナブルが浸透してきた今日、地産地消だけではなく、
【地域食材や食文化と地域の保全や貢献も含めた地域文化としての「食」と旅行者がそれを目的に地方まで来てくれて、食べるだけではなく、その地域の文化や歴史を知ることができる】
 これがガストロノミーツーリズムということだと思います。

 ガストロノミーツーリズムを少しでもご理解いただけましたでしょうか。
ユネスコの人類の無形文化遺産に登録された「和食」。日本の食や食文化は世界に誇る素晴らしいコンテンツです。

 後編では日本のガストロノミーツーリズムの事例をご紹介したいと思います。ご期待ください。


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