望月日向

会社員兼主婦です。夫との歳の差は17歳。北のとある地方都市で、現実と妄想を行ったり来た…

望月日向

会社員兼主婦です。夫との歳の差は17歳。北のとある地方都市で、現実と妄想を行ったり来たりしながら生きてます。 主にオリジナル小説、日々の出来事を綴っていけたらと思います。

最近の記事

【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第9話

第9話 パウンドケーキと猫  パティスリーに戻ると、今度は二階のカフェに通された。  土門は下で何か作業をしている。  その音を聞きながら、弥生はまだ少し出てくる涙をなだめていた。  あのまま帰宅していたら、きっと朝まで落ち込んでいただろう。  正直、もう一度店に誘ってもらえて良かったと思う。  気分が落ち着いてきたところで、弥生は席を立ち、カフェスペースをじっくり眺めだした。  天井は元のまま、床の一部や壁をリフォームしたようで、新しい木のぬくもりが感じられる、

    • 【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第8話

      第8話 真相 「どうしたの?こんな時間に」 「遅くにごめんね。ちょっとだけいいかな?」  優子は怪訝そうにしながらも、玄関に入れてくれた。 「上がってく?」 「ううん。すぐ帰るから」  寒気から暖気に包まれてホッとしたところで、弥生は赤い絵が飾ってある事に気づいた。  むき出しのキャンバスに、赤い色を塗りたくったような絵だ。  表面に凹凸があるので、油彩画のようだ。 ―前来た時にあったかな?  気にはなるが、それを聞くために来たのではない。 「実はさ、職場出

      • 【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第7話

        第7話 本当に怖いのは  外に出ると、ようやく雪が止んでいた。  スコップで雪を掘ったり、除雪機のたてる低い音が、あちこちでしている。  そのような夜道を、弥生は土門と連れ立って歩いていた。  車道にも雪が十センチは積もっているので、ちょうど左右に一本ずつ伸びている、タイヤの跡に沿って歩くしかない。  うっすら横目で観察するが、やはり映画から出て来たようなイケメンだ。  まだ緊張はするが、少しずつこの男にも慣れてきた気がする。 「そういえば、ひな人形は見つかった

        • 【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第6話

          第6話 呪詛返し 「三分引き付けろ」  土門がそう言うや否や、猫は前足を上げ、抑えていた女を薙ぎ払った。  部屋の端に飛ばされた女は、辺りを探すように視線を泳がせる。  自分を探しているのだと気づき、一斉に肌が粟立つ。  すぐさま距離を詰めた猫は、女と取っ組み合いを始めた。  猫の長い体に、女の長い腕が絡みつき、転がり離れ、睨み合うを繰り返す。  両者が転がるたびに派手な音が響くが、何故か辺りに置かれたものは倒れるどころか、揺れてすらいない。  一方、後ろ姿し

        【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第9話

        • 【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第8話

        • 【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第7話

        • 【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第6話

          【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第5話

          第5話 呪詛  おんみょうじ?  弥生の凍り付いた思考回路の中で、その単語が繰り返される。  何だったっけ?アニメか映画で聞いたような気がするけど…。  それを問いただしたかったが、今はやめた方がよさそうだ。  猫が急に動きを止め、土門の立ち位置より、少し前に後退する。  灰色人間は全滅していたが、腰を高くする猫の威嚇ポーズに、まだ事態が終わってない事を悟った。 「博臣様、別のモノが近づいています」  こちらを振り返った猫は、鋭い牙の並んだ口を開け、明瞭な言葉

          【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第5話

          【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第4話

          第4話 もう一つの稼業   相変わらず雪の降りしきる坂道を、弥生は黙々と歩いていた。  優子の涙を思い出すと、具合が悪いなど言っていられない。  怒り任せに足を踏み出し、何度も滑りそうになりながら、急な坂道を登り、いくつかの角を曲がる。  目的地…パティスリーシノノメには、難なくたどり着けた。  一階には明かりがついている。 「土門さん!いるんですよね!開けてください!」  鍵のかかった正面入り口を、弥生は力任せに叩いた。  三回目を叩こうとしたところで、磨りガラス

          【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第4話

          【小樽が舞台】2月は呪いの季節~パティスリーシノノメの事件録~第3話

          第3話 再び東雲町の店へ  青白い顔に、くまが浮かんだ目元。  冬なのもあるが、肌の乾燥がひどく、唇もガサガサだ。  毎日鏡は見ているはずだが、こんな生気のない顔になっていたのに、全く気付いていなかった。  幽霊のような自分の顔を見つめながら、弥生は黙々と歯を磨いていた。  昨夜は眠ったり起きたりを繰り返し、長い髪の女に追いかけられる夢を見た。  手足は、鉛を入れられたかのように重い。目の奥と頭も痛く、ため息が漏れる。  本当に風邪を引いてしまったかもしれない。

          【小樽が舞台】2月は呪いの季節~パティスリーシノノメの事件録~第3話

          【舞台が小樽の小説】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第2話

          第2話 旧手宮線の夜  小樽運河は、観光用の運河と、現在も実際に船が停泊可能な、北運河とに分かれている。  物流の手段が船から自動車にシフトしていった昭和四十年代。  広い道路の確保に迫られた小樽市は、存在意義を失いかけ、どぶ川になっていた運河を埋め立てる計画を発表した。  反対する市民達との論争は十年にわたって続いた。のちに「小樽運河論争」と言われる市民運動の興りである。  最終的には、南側の水路の半分は埋め立てて道路を拡張し、半分は観光用の運河として残す、更に北

          【舞台が小樽の小説】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第2話

          【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第1話

          あらすじ 北の観光都市、小樽。 NPO職員の御手洗弥生は、ごく普通の社会人。 霊感持ちである事と、男性が少し苦手な24歳だ。 雪深い2月のある日、社外での仕事中に、幽霊に追いかけられた弥生は、不思議な雰囲気の男女と出会う。 住宅街のど真ん中で、もうすぐパティスリーをオープンする、パティシエの土門。 その店のスタッフになる、和服姿のはんなり美女の音羽。 弥生は、NPO職員として何気なく名刺交換をする。 この出会いが、日常を大きく変える事になるとは、まだ知らない。 第1

          【舞台は小樽】2月は呪いの季節〜パティスリーシノノメの事件録〜第1話

          スイートロール

          お菓子作りは昔から好きだ。 最近覚えたのがクグロフ。 もとい、スイートロール。 最初の記事でも書いたが、 元ネタは海外のRPGゲーム「The Elder Scrolls V: Skyrim」 だ。 プレイするのは旦那オンリー。 LRボタンが一対しかなかった コントローラーで遊んでいた私に、 プレステ5は荷が重すぎた。 北欧風な世界観のゲームには、 様々な美味しそうな料理が登場する。 スイートロールはその中の一つだ。 富士山のような形のケーキ生地、トップには アイシング

          スイートロール

          はじめまして。 社会人歴は長くなってきたのに、いまだに厨二病気味な会社員兼主婦です。 主にオリジナル小説をアップしていこうと思います。よろしくお願いします。 写真は、クリスマスに作ったスカイリム飯。 スイートロールがポイント。 誕生日=ガチ クリスマス=ネタ が、我が家流です。

          はじめまして。 社会人歴は長くなってきたのに、いまだに厨二病気味な会社員兼主婦です。 主にオリジナル小説をアップしていこうと思います。よろしくお願いします。 写真は、クリスマスに作ったスカイリム飯。 スイートロールがポイント。 誕生日=ガチ クリスマス=ネタ が、我が家流です。