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袋直しとは /着物のお直し①

こんにちは
日本の着物仕立て処 ❋ 菊瓢 です———————————————
「和裁は我が国必須の英知の結晶。」
私は古より連綿と受け継がれてきた美しい着物を形にする技術【和裁】を慣用にする活動に力を入れています。
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🍀今回は「袋直し」について下記の5ポイントを中心にご紹介していこうと思います。

・袋直しとは
・表裏の釣り合いが崩れるとどうなるのか
・袋直しが必要な理由
・袋直しの費用について
・何故袋はできてしまうのか?


◯袋直しとは

⚠️「着物が袋になる」とは、袋状に仕立てられた和服が、湿度などの影響を受けることで表裏の均衡(釣り合いとも呼ぶ)が保てなくなり着用に影響してしまうことを言います。ご依頼時には「袋直し」と呼ばれる。


◯釣り合いが崩れるとどうなるのか?

・表丈袋の場合

こちらは一見すると問題に気が付かず、シワはアイロンで伸ばせると考えいたるかもしれない大島紬の様子です。

身頃の様子
お袖の様子

不均衡な釣り合いによる袋の放置はシワの原因となります。この状態の着物に有りがちな見え方はお袖の図で示している通りで小じわが全体に広がっているように見えます。これはただのシワではなく、裏地が縮んでしまったために行き場を失った表布がシワとなって現れたもので⚠️この場合アイロンを当てても解消することはありません。

表丈袋の状態

・裏丈袋の場合

なんの変哲もなく綺麗に見える着物

身頃を開くと裏地が大きくたるんでいました。これに伴い袖山の裏側では大きくシワが寄り、袖振りは裏地がゆるくビリついていました(写真撮り忘れ)
表に張りを持たせるため裏を気持ちゆるくしてお納めすることはありますが写真の着物は裏がたるんだ影響から裾が反り返ってしまっているので、こちらも先の大島紬同様にお直しが必要な状態となるのです。

※【着物に現れるシワは治療のサイン❤️‍🩹と言っても過言でないくらい着物の健康状態を示してくれているものです。⚠️無理やりのアイロンがけは禁物で気になる場合はお見積りをご依頼くださいませ。


◯袋直しの費用について

袋の有無は着装の見栄えに影響します
しかしながら依頼品に追加のお直しが増えてしまうと、本当に必要な処置かどうか不安になる事もあると思います。

表丈袋の例(上)

⚠️お直しは仕立て屋が一方的に行い料金を請求するものではありません。

中には目的の作業以外は求めないと事前にお断りをいただくこともあります。ご要望に合わせて対応したいのでお気軽にご相談くださればと思います。

その他の直しに加える場合の料金は、重縫製になるためお値下げが可能となります⭕️

《先の小紋の場合》
身幅直し+袖直し+簡単な袋直しで計20,000円にて承りました。(2024年11月時点)

料金についてはこちらをご覧ください。


◯何故「袋」はできるのか

入念に誂えられたはずなのにどうして「袋」は生まれるのか?仕立て不良なのでしょうか?

いいえ、仕立て不良ではありません

それは使用する素材によって伸縮率・吸湿性などの個性が異なるためです。絹は木綿や麻よりも吸湿性が高く水に濡れると強度が落ちるという性質を持っています。

また反物になるまでの加工状況が異なるため同じ絹でもそれぞれの性質に違いがあります。それを仕立て屋は繊細に見分け縫製します。
※紹介写真の着物は全て絹です。それぞれ表裏はバラバラに縮んでいるので性質の異なり具合がご覧いただけるかと思います。

(参考資料↑)

どんなに慎重に下準備をし縫製したからとて経年劣化や伸び縮みに延々と対応し続けられる完璧な仕立てはありません。木綿であれば着用と共に膝や腰周りが伸びるのは自然ですし、温帯湿潤気候の我が国では湿度の影響から免れることはできない故に正絹着物でも同様のことが言えるのです。


・絹を無闇に濡らしてはなりません

ポリエステル等の合成繊維は天然繊維に比べ伸縮率・吸湿性が低いので、自宅でお手入れをするのには向いていると言われています。
その延長からか袋や狂いを回避するため絹を予め水で濡らし完全に縮めてからご自分で縫製すると聞いた事がありますが私は絶対にオススメしません。
それが容易であれば既に尊い先人の方々が行い文字起こし推奨されているはずでしょうから。自ら行い安価におさめる<専門家に委託=最善のリスク回避策というのは言うまでもありませんし、絹の吸湿性に偏った話になりすぎているでしょう。(ご納得された上での挑戦だとは思いますが完全に縮めた後どうなるかは知らぬが仏)

お直しの完了した着物

◯着物の循環

以上のことから絹にしても木綿にしても、一定の素材の変化は許容して付き合うのが使い捨てない着物の特徴だと言えます。
通常の湿度のみの影響であればたった数日で変わってしまうことはありません。長い時間をかけゆっくりと変化していくので、今回ご紹介した着物のような袋はお手入れ時期の目安だと一区切りして、お直し等行われると良い着物の循環となるのではないでしょうか。

実際には着用頻度や状況に応じてお手入れは行われますが、袋だけでなく写真のようなシミ(カビ)もお手入れサインのひとつです。着物を大切に保存していくためにも是非見積もり依頼をご検討ください。

次回noteはこちらです⬇️

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日本の着物仕立て処❋ 菊瓢では和服に関する様々なご相談を承っております。ご試着も可能ですのでお気軽にメッセージをお寄せくださいませ。
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菊瓢  kikuhisago
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