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猩猩緋(しょうじょうひ)

猩猩緋
卑見に依れば、これは本來は、ケルメスと稱する動物性染料の明礬焙煎に依つて染められた、非常に鮮かな赤色である。

我が國で火氈(くわせん)と呼んだものは、南蠻渡來の猩猩緋の毛氈の意味であるが、しかし實際は、その素地は毛氈ではなくて羅紗である。

猩猩緋と云ふ名稱は、江戸時代の初期に出來た名稱で、猩猩が酒を飲んで赤い顔をしてゐると云ふ故事に依つたものであらう。

ケルメス染は我が國で行はれたことを聞かない。

我が國で行はれた猩猩緋染と云ふのは、紅緋染の、特に赤味の強いもので、ケルメス染の様な色をしたもののことである。その色は赤蘇芳より更に一層黄味であり、しかも紅緋ほどに黄味ではない。
卽ち云ひかへれば、紅緋よりも一層赤味の强い緋色系統の色である。

火氈は、古くから好んで馬具に使用され、特に鞍覆(くらおおい)には賞用された様である。

しかし室町末期あたりには、まだ猩猩緋と云ふ名稱は現れず、寛永の頃の記録に初めて「シヤウシヤウヒ」として出て來てゐる。

「日本色名大鑑」上村六郎 山崎勝弘 昭和廿三年

・卑見…自分の意見
・ケルメス…カイガラムシのこと
・紅緋染…紅花、支子、黄檗、うこんによる染めのこと

写真の襦袢反物をお預かりした時、やはり朱赤に惹かれ、反物は恐らく昭和初期から中期?辺りのものだろうと思い日本色名大鑑から探してみることに。

写真で実際の色をネット内で表現することは大変難しいのですが、出来るだけ近い色味でここへ載せています。

本を開いてみると『猩猩緋』が1番近い色味に感じる。

猩猩緋といえば、かの有名なこちらの陣羽織を想像すると色味を連想しやすくなると思います。

 豊臣秀吉に仕えながら、関ヶ原の戦いで徳川家康に味方した小早川秀秋(1582〜1602)が着ていたと伝えられる陣羽織。

猩猩と言えば、お猿さんのこと。
お猿さんと陣羽織の猩猩、もしかして猿に掛けてるのかなと感じたり。

兎に角、あくまで我が国には植物由来の染めとしての猩猩緋であって、生き物の殺生による染めではないと否定している様に見えるところが日本らしくて良いなと感じたのでここへ載せてみました。

今回はメモ程度に、参考になれば幸いです^^

以上ものぐさ和裁師でした🪡

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菊瓢  kikuhisago
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