くりこし①/基本の考え方
こんにちは
日本の着物仕立て処 ❋ 菊瓢 です
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「 和裁は我が国必須の英知の結晶。」
私は古より連綿と受け継がれてきた美しい着物を形にする技術【和裁】を慣用にする活動に力を入れています。
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🍀今回は着物の寸法「くりこし」の考え方について4点ご紹介しています。
・くりこしとは?
・くりこしの役割
・付け込みの役割
・くりこしを付けない着物
◯くりこしとは?
くりこしとは主に成人女性が着物を着る際、衿元背面を開けるために(※「衣紋を抜く」と呼ぶ)付ける寸法の事です。出来上がった着物では空白で付け込みと合わせて確認することができ、くりこし・付け込みとを合わせて「衿付け込み」と呼ぶこともあります。
肩山から後ろに下がって背中心までの空白へ「くりこし・付け込み」の2寸法が付けられており、縫い代を覗いてみるとこんな具合になっています↓↓
衿肩あきの切り込みを境にくりこし・付け込みが分かれています。
「くりこしのある着物」は肩山から後ろにくりこし分下がった位置に切り込み✂️を入れるのです。
🍓くりこしの無い着物
反対に「くりこしの無い着物」は上図の様に肩山位置で衿肩あきの切り込み✂️を入れます。(※縫い代分として3分だけ後ろに繰り越されている状態で仕上がる)
実は昔の着物はくりこしが無いものが主流で「くりこし」と確立され呼ばれるようになったのは昭和初期頃だと考えられ、定着するまでは上写真の衿肩あきが一般的でした。
◯くりこしの役割
一般的に「衣紋を抜きやすくすること」がくりこしの役割だと言われています。
よく肥えた方はくりこしがあった方が着やすいと考えられたためにに世に浸透した寸法だとも私は推察しています。
↑写真左は「衣紋を抜いていない」状態ですが、くりこしを7分(2.6㎝)付けているので自然な状態です。
肩山を肩頂点にして比較しました。
くりこし無し左着物は衿が詰まってしまっているので、見栄えから言えばくりこしを付けた方がゆったり着用できるでしょう。
◯付け込みの役割
くりこしのみでは衿が付けられないため、縫い代として「付け込み」が存在します。(※衿付け込みの略なので)
付け込みのもう一つの大きな役割として衿のカーブを付けるためとも考えられます(※直線裁ちの場合)
付け込み寸法は基本3分(1.1㎝)ですが、カーブの程度によって5分(1.8㎝)程度付けられます。
・⚠️付け込みは記入すべき寸法
着物を誂えた経験のある方はご存知だと思いますが、「付け込み」は寸法記載がありません。
呉服屋さんで寸法をご指定されることはありますが、多くは未記入なので仕立て屋で判断する寸法となっています。
この衿のなかの縫い代は大昔に比べくりこしの記載が当たり前になり付け込みが3分とも限らない時代、曖昧にしてはならない重要な寸法だと考えています。
中にはくりこし寸法の中に付け込みが入っていると思い違いをして仕立てる方も居られると聞いたことがあります。
外にあるか中にあるかで仕上がりは大きく変わるので想像するだけでも…ゾッとする話です。
◯くりこし寸法の測り方
くりこしの計測方法は①背中心〜内あげまでと②脇側の肩山〜内あげまでを真っ直ぐあたり、②から①を引いた寸法が「くりこし+付け込み」となります。写真の場合は5.8㎝(1寸5分)です。
尚、くりこしだけを測りたい場合は衿付け部分を指で触り凡その寸法を測ります。写真の場合ですと1.9㎜(5分)が付け込み寸法となります。よって5.8−1.9=3.9(1寸)がくりこし寸法となるわけです。※寸法を伝える際は合わせた寸法もお伝えするとより正確です。
◯くりこしを付けない着物
基本的にくりこしを付けない着物はこちらの3つです。
・男性着物
・子供着物(十三詣りまで)
・上記の襦袢
しかし体格によっては付けた方が着やすくなる場合もあるため臨機応変に対応しています。反対にくりこしを付けてもよい着物は以下の通りです。
・成人女性着物類(十三詣りから後)
・成人襦袢
・羽織、コート類(くりこしは必ず付ける)
昔の女性の成人は13歳で、元服とも呼ばれました(男性は15歳)。現在の18歳とは異なりますが身体の成熟時期を優先すると、この間はくりこしを付けても良いと考えても問題はないでしょう。
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