羽織の衿からコンニチハ②
こんにちはものぐさ和裁師です。
前回の羽織の裏がこんにちは♩してくる問題↓↓からの引き続きになります。お見逃しの方はこちらからどうぞ^^
羽裏が飛び出してくる問題は、一旦解決しましたがその他に気になることがあったのです。
◯乳付けはその位置?
…そうです、乳付けの位置が低すぎるのです(*_*)
置いて測ってみると肩山から乳付けまで1尺以上もあるのでした。
◯乳付けの標準位置
羽織の乳付けの標準寸法が肩山から8寸5分から9寸なので写真はかなり低めといった印象。
乳つけの位置は帯締めと帯の上ラインとの中間点が◎良いとされています。
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トルソーさんに着せ付けていますし数字だけ当てはめてもそれが正解とはならないのであくまで標準寸法なのです。
帯を高く締めるか・繰越を多めに抜くのか・猫背なのか・肩まわりが肉厚なのか、若しくは薄い体型なのか。ご自分で帯を締めた際の乳付け位置をよく確認して覚えておけると良いですよね^^
◯乳付け以外にも…
乳付け以外にもう一点。気になることは、羽裏が長すぎて目立つこと。
羽裏が反対色のせいか裏地がどうしても気になる。美しく見えるのならまだ良いのだろう…これはアイロンかけをした程度では直らない。仕立ての問題もある様です(*_*)
この写真でもある様に乳付けからかなり下がった位置にハギ位置があります。
という事は乳付けより上は留まっているので然程心配は無用だが、それより下は動いている時ならまだしも写真の様な静止画の際に裏が出てきたり、ゆらゆら安定しないのは気になるもの。
恐らくこちらを仕立てる時点で、表若しくは裏の生地の長さが足りなかったか、何らかの理由があるのだろう。死人に口無しとは言いますが、着物は語れませんからね(^^;
本来であれば、このハギ位置はもっと高い所にあるべきなのです。仕立て屋もこの事に注意をして仕立てをすすめなければならないですね。
特に現代に於いては、ロング丈が流行りの様ですからよく注力したいところです。
ハサミを入れる前に。ハギ位置が低くなるからと和裁師が伝えてもその事をお客様まで伝えてくれる呉服屋さんは一体どれだけあるのだろう・・・
呉服屋さんと和裁師の相互協力がないとこれからのお客様の着姿がより美しく改善されていくことは難しそうですね。
○和裁師としての悩み
理想の美しさから遠ざかってしまうと、お客様自身も着物嫌厭の理由に繋がりますし。
やはりいつまでも着用姿には注力し続けていたいです!!ここは熱く語らせてくださいm(__)m
和裁師は和裁師ですから着物を毎日着ているわけでもないし、お客様と毎日会話できるわけでもありません。
ひたすら自分の腕を磨き続けるのみです。その中でやはり個人個人の着用姿のお悩みに対応していこうとなると、お客様自身の体型を直接測ってみたり、着付けてみたりしないと分からない事は大いに出てくるのです。
経験から寸法を当てがうことはできますが、格個人のお客様の細かな希望に対して、お誂えの仕立て一回でバッチリ叶えていくには限界があります。
通常の和裁には洋裁のドレスを作る時のような仮縫い作業はありません。出来ないことはないのですが、今の呉服屋さんとの関係性ではお客様と和裁師との距離が遠すぎるのです涙(今までの標準寸法のままの仕立てで十分だと考える方も多いとは思います。アンケートを取ったわけではないですが…)
全国の和裁師さんが個人で集めた貴重なデータは公開される事はありませんし(^^;
ですから和裁師と個人個人のお客様とのやり取りの中で、何とかお客様に合うベスト寸法を導きだしていくしかないのです。
現代の様に手軽に写真を撮って保存しておける時代になった今、お客様自身も自分の姿を見て反省したり悩んだりして着物に挑んでいくのではないでしょうか?
責任をもって納品までは行えても着用姿だけは見せてもらえない多くの和裁師は一体どうしたら良いのだろうか?お客様の希望する着姿と程遠い仕立てになってしまった場合、それを個人のデータとして次に生かすにはやはり生の声を聞く以外の方法は無い。
この部分はかなり頭を悩ませております。もしかすると、お客様自身も仕立ての違いよりも自身の着付けの腕のせいにしてしまって心の奥底へ閉まっている可能性も大いにあったりして・・・
着物や襦袢のように内に着て調整の効く衣服ならまだしも、羽織やコートの様に一番上に纏う衣服に対してはもう少ししっかりとしたデータを積んで全国の和裁師で共有していくべきじゃないだろうか?それがより良い呉服の未来に繋がるんじゃなかろうか?生意気にもそんな風に思い続けています。
明らかな仕立て不良でなければ無料でお直しすることはできかねますが、次回からは寸法を変化させたいと思う希望の声をしっかり受け入れていきたいです。勿論有料のお直しをすることも可能です。
羽裏の色を反対色にしなければ裏が飛び出てくる問題も然程目立ちはしないけれど襦袢のチラ見えの美と同様でやはり、羽裏への拘り、羽裏の良さというものがありますからお客様の希望の生地合わせに是非とも答えていきたいですよね!
私が羽織を初めて教わった時もパート1の引用と同じ声掛けをしていただいた記憶があります。羽織は熟達者しか縫ってはならないんだよと。
これからもお客様の悩みを聞いてそれに寄り添いながら自らも着用して、より良い仕立てが出来るように邁進して参りたいと思います。
ここまで読んでくださいましてありがとうございました
以上、ものぐさ和裁師でした🪡