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埃はシミになる!【袖丸事件簿②】
【袖丸事件簿①】では、埃が着物へのシミの要因となることが分かりました。
続けて何を語るんだろう…そう思ったそこの貴方!期待はほどほどに🥹いえいえ、多少は期待してくださいね。
前回に引き続き、和裁士として縫製する立場として改めて感じた重要なことを書いていきます。
◯変わったシミ
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/172527720/picture_pc_0d25711a3b0eb325754771f471f40417.png?width=1200)
前回は袖丸の茶変シミについて言及しました。
袖丸とは反対側に小さく同様のシミがありました。
手で触ってみたところ、硬く当たる感じ。
「こ、これは、まさか玉結び??」
ギョッとする私の心…まさか、まさかね…
◯シミの原因
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/172528010/picture_pc_558b517d588cb0b8813efdfda84d53c5.png?width=1200)
縫い目を解いて内側を覗いてみたところ、玉結びの影響ではなくただの茶変……でもなくてほんの僅かにチリが溜まっていただけのこと。
⬆️写真はそのチリを払う前の様子ですが、分からないと思います。そう、肉眼で見ても分からない、風で飛んでいきそうな程のチリ埃がほんの少し付着していただけだったのです!
⚠️この茶変がたったそれだけのものに影響されて出来るシミだったということです。
そのチリを指で払って取り去ってみました。チリは消えてもシミは消えない。正に埃パワー、世にも恐ろしい悪魔の召喚方法です。。。
このチリ埃はいつ入ったものでしょう?
着用時?保管時?かなりの閉所だったため、私の見る限り縫製時ではないかと予想します。
◯罪か?!
縫製時に入った埃がシミを作るのならばその縫製をした人は罪になるのでしょうか?
こんな恐ろしい裁判があるでしょうか…
埃は何処にでもあります。正直埃にまで責任は取れません。ごめんなさい。
和服は和裁により定期的に洗い張り・仕立て直しを繰り返して使い続けることを前提として作られています。たとえ埃が入り込んだとしても、次の洗い張りで一掃されるため、埃が悪さをする前に綺麗にしておくことが出来れば1番良い着物の循環と言えるでしょう。
しかしながら、縫製者が常に清潔を保って、埃を溜めない・掃除を欠かさない仕事場を保つのは責任の範疇です。
大事なので重ねて言います。
シミ対策に限らず、事故防止や不慮の裁判を避けるためにも、縫製者は職場環境を常に美しく保つ責任を持つべきでしょう。
◯糸なのか?
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/172529142/picture_pc_91618d543f7324749db023ea14570c6c.jpg?width=1200)
前回もご紹介したこちらの写真ですが、気になる箇所がありました。
それは、袖丸の茶変だけでなく、糸が茶変しているところです。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/172529583/picture_pc_dda4bc2ec9431e0393b70ab3337bec72.png?width=1200)
袖丸を縫うための「丸み糸」が茶変しています。しかしその横、本縫い目の縫製糸は茶変していないのです。
これは一体どういうことでしょうか?
探偵ものぐさは唸ります…🕵️
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/172529734/picture_pc_6fe2d184eef1ff2ebde0ad6fe8f5ec48.jpg?width=1200)
同じ丸みを糸を解いて別場所から見ると…
見事に丸み糸のあった場所が縫い目に沿って茶変しています。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/172530040/picture_pc_36cc0be409a9dabc2cb0fbfb97b8a609.png?width=1200)
実はこれ、茶変していない本縫いの縫い糸が「絹」なのに対して、丸み糸だけが「綿」だったのです。
こんなことってあるでしょうか?
綿だから、違う性質の糸を使ったからシミになった???
絹は綿よりも吸湿性に富んでいるので、湿度面から考えると綿だけがシミになる理由にはならない。もしかしたら、汚れを吸い寄せる帯電性から考えられるのか??
偶然の産物の可能性があるため綿だから悪いと決めつけてはなりません。しかし、理由が知りたい。もしもご存知の方がおられましたらコメント欄やInstagramのメッセージからご連絡くだされば幸いです。
どうぞ宜しくお願いいたします。
◯まとめ
というわけで、「綿糸の茶変」に関しては迷宮入りしてしまいましたが、仕立て屋として気をつけるべき点は明瞭だったかと思います。
着用時だけでなく、縫製時にも入り込む埃を避けながら仕事を進める努力をしなければなりません。
絹や綿と一口に言っても加工方法で性質も大きく変わっていますから、絶対に茶変するとも言い切れないと思いますが、危険を回避することは非常に重要です。
虫干しやお手入れを加えながらこれからも着物を愛でていこうと思います。
以上、2つのnoteが着物を愛する皆さんのお役に立てれば幸いです。最後までご覧くださいまして有難う御座いました🍀
【※追記】🙂🙂🙂
綿糸の黄変について「三島染色補正店」の4代目三島正義さんがご助言をくださいました。
木綿糸の変色は
とじ糸(表時と裏地を軽くて留める理由で全体にあります)に石鹸を塗る人がいるためです。木綿後は針通りが悪いと言う理由で滑り良くする為に石鹸を使う人がいます。大抵の石鹸は弱アルカリ性なので絹を黄ばませるのです。
最初は薄手の胴裏から見えますが、経年で表地も変色させます。とてもだめな仕立て方法で、直すのは大変な手間が掛かります。もちろんとじ糸全て取り替えになります。
ぜひ改めて欲しい点です。
これは仕立て屋さん向けに拡散希望です。
上記のように、仕立て最中に石鹸を扱う場合は長期保存でその箇所だけ黄変してしまうということです。
硬い品物で針通りの悪いものは石鹸を使うことで針がスムーズに進むようになりますが、デメリットが大きいということです。
一旦シミになってしまえば取り払うことが非常に困難な石鹸の成分。昔は使用を推奨していた模様ですが、洗い張りが減った現代では禁じるべきだと思いました。
⬆️三島さんこの度は有難う御座いました。これからもご活躍を応援しています^^
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「 和裁は我が国必須の英知の結晶。」
私は古より連綿と受け継がれてきた美しい着物を形にする技術【和裁】を慣用にする活動に力を入れています。
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