見出し画像

惜別

乾いた空気
どよめく
空虚な部屋

こころの真ん中に空いた
ピストルの風穴は

誰も埋めようもなく
隙間風が 淀みながら
流れてゆく

妖精とふたりきりで
ベランダに 佇んでいると
あるはずもない音が
耳を撫でる

病まない咳は
やむことはなく
幻覚を呼び覚ますだけだ

虚しく響くドラムの音色は
わたしの喪失した大切なものを
埋めてはくれない

明滅するライトは
盲目のハイエナには
映らないから
月夜に吠えるのは
わたしだけでは 寂しい

さあ そろそろ 惜別の時
肉体を捨て
黒い川を渡り
あの子に 再会したい

たいいりょう

いいなと思ったら応援しよう!