夜明け

静寂が わたしのもとを去り
あの身を焦がすような 陽光の
蔓延る夜明けが ふたたび やってきた

眼球を 抉り 肉体を 焼き尽くし
精神を 狼狽させる 真昼の光は
すべての生命の根源だ

しだいに 明らむ 蒼天の空
月は 吠えずらを かきながら
ゆっくりと 雲の裏側に
隠れてゆく

アポロンは 火の車椅子から 転落し
海に墜落して 火事になった
そして ヴィーナスを ワインボトルに
閉じ込めた

こんな日は 冷えた冷蔵庫にでも
首を突っ込んで 冷凍マグロにでも
なってみたい

代わりに ゴルゴンゾーラチーズを
取り出し 白いワインと協奏させてみた
妙な酸っぱい汗のような味がした

夜明けの雨は 沈黙したまま
しずかに 雨樋を 流しソーメンのように
滴り落ちる

そして ミミズが眠る 土を湿らせ
すべての微生物を 叩き起こす

たいいりょう