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2.「やりたい.できた.ラボ」のプロジェクト化
前回の記事では、3Dプリンターやデザイナーの方との出会いについてご紹介しました。今回は、その出会いから「やりたい.できた.ラボ」というプロジェクトがどのように動き出したのか、その経緯をお話ししたいと思います。
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3Dプリンターで何を目指すのか?
まず私たちは、「なぜ3Dプリンターを使った取り組みをしようと思ったのか」を改めて考えました。
当初は、「何か面白いことができそう」という漠然とした期待感が中心で、具体的なイメージは持てていませんでした。
そこで、次のような問いを投げかけて深掘りしていきました。
・「そいる」(私たちが所属するNPO法人)として取り組む意義は何か?
・ お子さんやご家族と関わる中で、何を大切にしたいのか?
「そいる」には「土、土壌」などの意味があります。「花よりも花を咲かせる土となれ」という理念のもと、私たちは良質な“土”として子どもたちの成長を豊かに育む支えとなることを目指しています。また、お子さんとそのご家族が共に安心して過ごせる場所を提供し、素敵な笑顔や花が咲くよう願いを込めて活動しています。
こうした問いから浮かび上がった思いが、次のようなものでした。
「子どもの可能性(できること)を広げたい。」
これが、プロジェクトの目的として明確になりました。
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では、何をすればいいのか?
次に、この目的を達成するために、
「私たちに何ができるのか」「何をすべきなのか」を考えました。
その結果、次のような課題が見えてきました。
3Dプリンターの可能性が十分に知られていない。
私たち自身も、3Dプリンターで何ができるのかをまだ把握しきれていない。
道具(3Dプリンター)から具体的な結果(やりたいことが叶うこと)を想像しづらい。
活動を継続するための収益化の仕組みが見えていない。
これらの課題を解決するために、私たちは以下の取り組みを進めることにしました。
やりたい!できた!の事例を蓄積していくこと
取り組み全体をプロジェクト化し、情報をわかりやすく伝えること
ストックした事例を積極的に発信していくこと
活動の持続可能性を高めるための方法を模索すること
こうして生まれたのが、「やりたい.できた.ラボ」というプロジェクトです。
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「やりたい.できた.ラボ」プロジェクトは、以下の3つの機能を持つ場で構成されています。
1. 「やりたいを相談できる場」
やりたい気持ちが芽生えたら、実現に向けてすぐに行動できる窓口機能です。「こんなこともできないかな?」と気軽に相談できる場所として、サポートを行います。
2. 「やりたいを実現できる場」
作業療法士とデザイナーが連携し、環境設定や3Dプリンターを活用したオリジナル自助具のデザインなど、具体的な実現方法を一緒に考えるラボ機能です。
3. 「できた体験を共有する場」
次の「やりたい!」につながる「できた体験」を蓄積し、学会、地域イベント、ワークショップ、SNSなどを通じて情報発信・共有を行うライブラリー機能です。
このように、「やりたい.できた.ラボ」では、「できた!」という体験があふれ、次の「やりたい!」へとつながるサイクルを作り出します。私たちは、このサイクルが地域社会の暮らしの中でひろがっていくことを目指しています。
次回予告
次回は、このプロジェクトの第1弾となる自助具、「サイのプルトップオープナー」が完成するまでのお話をお届けします!
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