生き物を始めて殺した日
若かった頃 フランス料理人を目指して修行に励んでいた時のことです
その頃は 広島で修行中の日々を送っていました オーナーは 若い料理人を集め本格的なレストラン作りに力を入れていました。 少しでもヨーロッパ料理近づけようと切磋琢磨する若い料理人を応援してくれ 自由な環境で料理を作らせてくれました。 当時はまだ ヨーロッパ料理は未知の料理で 今では周知の事実ですが パスタという言葉はなくスパゲッティナポリタン フォアグラはペーストの缶詰のみ ボジョレー・ヌーヴォーに至っては言葉も知らない時代で 料理書を見ては 未知の食材を思い描き 試作をしては食べてもらう日々 本に載っているハーブも種を探し種から育て 石油のドラム缶で燻製装置も作りハム ニジマスの燻製も作りました。ある時 ホロホロ鳥をフランスでは使っていると書かれているのを見つけ 使ってみたい 未知の食材を手にしてみたい どうやって見つけることができたのかは忘れましたが 岡山で飼育しているのを見つけ取り寄せることにしました 宅配便もない時代 冷蔵輸送も発達しておらず しかも鉄道輸送のみの時代 生の食材の仕入れは難しい時代ででした。とりあえず発注 数日して 到着した荷物を見てビックリ 生きていて籠の中で鳴いているではないですか ⁉ 後輩と二人「どうしよう?」目の前のホロホロ鳥を見て立ちすくんで啞然としたことを思い出します。連絡してみると「〆めて送ることは法律で禁止されている」とのこと 都会育ち 生きた鶏も触ったこともなく ましてや〆たことなど あろうはずもありません。 しかし 殺さなければならない❕どうしたら〆殺せる? 魚は慣れているがどうしたものか とりあえず首をひねり弱らせ切り落とせば何とかなるか? 郊外のレストランであっても調理場で〆ることは出来ない 意を決し裏山の藪の中へ 動くホロホロ鳥を目の当たりすると おじけづき 気迫がなえてしまう とりあえず首をつかむ 鋭く叫び逃げようと激しい抵抗 温かい筋肉の凄まじいエネルギーが手に伝わる 手に力を入れる がひねれない! 腰が引けて力が入らない 手に感じる温かい体は 初めて感じる生命に対する畏敬の念 〆殺すリアル感 とは言え何とかしないと 意を決して 力任せに一回転 最後の力が入らず手からすり抜け 首が折れたホロホロ鳥は走り回ってしまった。絞め殺す恐怖 手が震えた初体験 今も手に残っています。残り4匹は後輩が必死に絞め殺してくれ 湯につけ羽をむしり取り内臓を取り出し オーナーに試作した苦い思い出の食材です。 アドレナリンが出た下処理は初めてでした。