FESTIVAL TRIP
先日仕事の合間に東京下町の実家に帰省し居間で一息ついていると開いた窓から微かに笛と太鼓のお囃子の音色が聞こえる気がしてハッとした。すぐに母親に確認すると、『今日と明日は貴船神社のお祭りよ、あんたも昔はよく行ってたわよね。』やっぱりそうだ!すぐに家を出た。大学時代から地元を離れあまり寄り付かなくなっていたが、たまに帰省してもこのお祭りの時期にはかぶっていなかったのだ。
下町特有の細く迷路のような、まるでモロッコのマラケシュ旧市街を彷徨うように進んでいくとお囃子の音色がハッキリと聞こえてくる。もう完全に自分は小学生にトリップしている。勝手知ったる旧市街を進むと突き当たりにモスクならぬ神社が現れた。断りのために言っておくが、この神社は下町の住宅街の中にあるもので立派な参道やお店が立ち並ぶような場所ではないし、普段は公園代わりに地元の子供達がちらほら遊んでいる程度の、言ってしまえば物悲しい神社である。そんな神社が年に一度、幕や竹で装飾され、舞台ではお囃子が演奏され、テキヤがびっしり並び、地元の人でにぎわいをみせる週末がある。それが例大祭、お祭りだ。毎年この週末は小銭を握りしめ買い食いをしつつ、夜になっても裸電球で彩られたテキヤの道を何度もただただ往復していた。とにかくワクワクして楽しかった記憶しかない。それが祭りだった。今回数十年振りに自分のルーツであるこの祭りに訪れると、そこには変わらない光景が広がっていた。まだ世界が狭かった小学生の自分にはもっと広く華やかな場所に見えていたであろう。まるでマラケシュのジャマ エル フナ広場のように。
旧市街を後にし、本題の仕事であるお台場で行われているフェスティバル会場に到着すると、ステージでは女性歌手が観客を煽り、観客はそれに呼応して声を上げたり飛び跳ねたりしている。終演が間もない会場に熱気が渦巻いている。一旦駐車場に戻り終演後の撤収作業の準備をしている自分の頭の中には、まだ祭り囃子がリピートして鳴っている。それもこれも祭りだなぁ。色々便利な世の中になる代償として息苦しさを感じる現代において、人が集い歌い踊って楽しむことの大事さを改めて痛感した。
今回は、春から秋まで各地のフェスを巡る自分にとってのルーツを再確認する貴重な週末となった。そして、来場者がいなくなった会場では撤収作業をしながら何だかニヤけている自分がいた。
さぁ今年も未知なるFESTIVAL TRIPへ出発だ!
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