デンソー アイリス #4 川井麻衣優勝するために呼ばれたからには「リュウがいたら大丈夫!」
「チームのみんながすごく歓迎してくれたことで今がある」
富士通レッドウェーブ vs デンソー アイリス、昨シーズンのファイナルと同じカードが開幕から5週目のWリーグで行われた。1巡目の2連戦は、チャンピオンの富士通が2連勝する結果に終わった。開幕から負けなし8連勝中のデンソーだったが、初戦は21点差の47-68で大敗。「練習してきたことを出そうとしましたが徹底できていなかったり、5人の連携が取れなかったり、準備してきたオフェンスが出せなかったです。もちろん、それもディフェンスから徹底しなければいけなかったです」と川井麻衣が率直な感想を述べた。
富士通はディフェンスを勝因としていたが、デンソーとしては守られたわけではなく、「この結果は自分たち次第だったと思います」と川井は考えている。「オフェンスが少し単発になるシーンが多かったです。これまでの試合ではなかったような1on1で攻めることが多かったと感じ、もう少しチームで崩したかったです」と悔やむ。当然、富士通のディフェンスも素晴らしかった。だが、それを上回る準備をし、良いイメージを持ってデンソーも臨んでいた。相手へ対応しながらも、現状は自分たちにフォーカスし、その精度を高めてきたはずだった。それが8連勝という結果にもつながっていた。
「だからこそ、この試合では練習してきたことが出せなかった感覚があります。相手がチャンピオンチームということで、少なからずみんなも意識していたとは思います。でも、一個ずつ目の前のことをしっかり遂行していかなければいけなかったです。やっぱり40分間は長いので、自分たちのスタイルを徹底するためにはメンタル面も、プレーでもまだまだやるべきことがあります」
富士通を相手に2連敗したが、それまで開幕8連勝したことの方が今シーズンのデンソーにとっては大きな意味を持つ。川井をはじめ、トヨタ自動車アンテロープスから梅木千夏とシラ ソハナ ファトー ジャの3人が新加入したばかりにも関わらず、負けていなかった。川井に8連勝を振り返ってもらえば、「日頃の練習からたくさんコミュニケーションを取るようにしていますし、梅木もケガで離脱した時期もあったソハナも、チームのみんながすごく歓迎してくれたことで今があります。もっともっと力になれる場面は3人ともあると思っているので、もっとできるし、やっぱりまだまだです」とチームに浸透する努力を続けている。
その架け橋となる存在が、本川紗奈生だ。ベンチでは川井の隣に座り、戦況を見つめながら身振り手振りを交えて積極的に話し合う。「イチさん(※本川のコートネーム)は経験があり、いろんな方面から客観的に見ています。役割が変わったとしても、私や梅木がまだわからないことや馴染みきれてない部分をフォローしてくれているので、すごくありがたいです。一緒にコートに立つことも、私自身は楽しいです」とその支えが頼もしい。チームメイトはもちろん、遠いアウェーゲームでもベンチ裏で声援を送るファンも温かい。だからこそ、デンソーカラーにもっともっと染まりたい。
川井の出番は先発の梅木と交代するときもあれば、一緒にコートに立つこともある。木村亜美とともに「いずれにしてもツーガードなので、ポイントガードでもどちらでも良いです」とポジションはあまり気にしない。全うすべき役割は「アタックすること。今はそれだけを考えてプレーし、それがチャンスにつながる場面も多かったです」と富士通との初戦は第3クォーターに流れを引き寄せた。その時間帯は髙田真希と馬瓜エブリンはベンチにおり、梅木とソハナと一緒にコートに立っていた。
「リツさん(※髙田のコートネーム)とダンさん(※馬瓜のコートネーム)のところは相手もマークしてきます。力がある選手たちなので、個で打開できる部分もある程度はあります。スタートからセカンドメンバーに代わったときには私が引っ張って、良いテンポでバスケをする。そのためにも感覚の部分を大事にし、頭を使うよりもみんなの良さを引き出して、スピーディーなバスケットを作ることをすごく意識しています。リツさんとダンさんの2人が抑えられても、セカンドメンバーが勢いづけることを私も、みんなも自信をつけてコートに立てるような状態にしたいです」
敗れはしたが、チャンピオンとの対戦を通じて、「自分がペイントに入って行くことをやり続けなければダメだというのが分かりました。どんな場面で出ようが、しっかりと自分の全うすることが明確になった試合でした」と居場所を見つけるきっかけになった。
チームケミストリー絶賛向上中の川井だが、髙田と馬瓜、赤穂ひまわりは日本代表で一緒にプレーし、赤穂さくらと篠原華実は同い年。小笠原真人アソシエイトヘッドコーチとはトヨタ自動車で優勝を経験。今シーズンから新たに加わった成田明香チーフマネージャーも三菱電機コアラーズ時代をともにし、居心地が良さそうだ。トヨタ自動車で2連覇を経験し、ベテランに足を踏み入れた川井はこれまでの経験を還元するのも役割である。
「優勝するために自分はここへ来たし、そのために呼ばれたとも思っています。そこに対する責任を毎試合持ってコートに立っています。最後の場面で接戦になったときは、ポイントガードの力が出ると私は思っています。そこで勝ち切れるゲームコントールをする選手でありたいし、チームを良い方向に導けるように移籍してきました。的確な指示を出したり、自分がアタックしたり、その自分の良さをチームに浸透させ、『リュウがいたら大丈夫!』とファンの皆さんにも、チームメイトにもコーチにも思ってもらえるように、もっともっとがんばりたいです」
今週末のトヨタ紡織サンシャインラビッツ戦、来週のENEOSサンフラワーズ戦で全チームと1巡目の対戦が終わり、レギュラーシーズンも後半へ突入する。11月31日から2連覇を狙う皇后杯が待っており、チームの完成度を高めるための時間も迫っている。
文:泉誠一