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対戦格闘ゲーム『剣撃クロスゾーン(早期アクセス版)』をプレイした感想。

戦場に咲き乱れる剣撃の華


❗️訂正とお詫び❗️
筆者は体験版だと認識していましたが、公式サイトに『早期アクセス版』との表記がありましたので補足します。

同人サークル攻勢道場より制作された『剣撃クロスゾーン』を紹介。
2024年のデジゲー博で公開され、記事執筆現在、DLsite、Steam、BOOTHなどで購入可能となっている。

※Steamは申請に時間がかかるとのこと。
DLsiteがセールやクーポンがあるのでオススメ。

本作はジャンルが対戦格闘ゲームであり、キャラクターを選んで動かし攻撃して相手の体力をゼロにすれば勝ちというゲームだ。
基本的なルールは他の格ゲーと同じだが、本作では制作者のこだわりにより珍しい仕様がいくつかある。
それらは単体として見ると個々の要素だが、あるひとつのコンセプトによって統一されたデザインになっているのが美しい。
なんとなくあるわけではない。
ある明確な意思のもと、プレイヤーに特定のスタイルを推奨するために生み出され必要なパーツとして剣撃クロスゾーンという作品を構成しているのだ。
どういった要素があり、それらが総体としてなにをもたらしているのか。
以下に記していく。


ハイスピードモーション

本作をプレイしてまず感じたのが、モーションの速さだった。
とにかくすべての攻撃モーションが速い。
アピールポイントでもあるので、こだわり、売りの一つなのだろう。
速さとは爽快感を生み出す大きな要素だ。
特にアクションゲームにおいてそれは顕著に感じられる。

相殺

交差する剣撃が戦場に金属音を響かせる。
相殺は本作を象徴する要素だ。
天翔○閃×虎伏○刀勢の再現のようだ!

本作の特徴として相殺が挙げられる。
遡ればギルティギアシリーズやあすか120%シリーズ、同人だと渡辺製作所(旧)のQOHなど思い起こされるが、仕様は作品毎に異なる。
本作では、お互いの攻撃がぶつかり合ったとき、ダメージは発生せず打ち消し合う。
相殺仕切れなかった分はダメージを受ける。
どの程度相殺できるかは、アクションにより異なる。
他の仕様だと、どちらか一方の攻撃が通るか、相打ちになって痛み分けになるなどある。
多段攻撃を相殺させると、キン、キン、キンと小気味良いテンポと音が続き爽快だ。
タイトルにクロスゾーンとあるので、キャラクターが攻撃をぶつけ合う、交差するシーンをイメージしたものとおもわれる。
これもこだわりポイントのひとつなのだろう。


桜花「無駄です」(言ってない)
相殺に打ち勝ってヒットさせるのも気持ちいい。

格ゲーというのは、コンボゲーが多い。
というか、コンボのない(ダメージソースでない)格ゲーなどほぼ存在しないと言ってもいいかもしれない。
初代サムスピとかブシドーブレードとか一撃に重きを置いた例外もあるにはあるが、主流ではない。(僕は好きだが)
コンボとは格ゲーの華として定着している。
次々に攻撃を決めていく様は派手で爽快感がある。

だが、デメリットもないわけではない。

コンボとは攻撃を受けている側は原則行動不能だ。
アクションゲームに限ったことではないが、ゲームにおいてプレイヤーが動かせない時間というのはストレスになる。
なるべく短いに越したことはない。
コンボゲーはここにジレンマがあって、長いコンボほどやってる側は気持ちいいが、やられてる側の動かせない時間によるストレスは比例する。
本作はあばれの強さをアピールしているが、睨み合いやけん制のよる駆け引きや、ワンサイドによるコンボよりも、

『両者とにかく動く。攻撃し合う』

ことに重きを置いている。
他のシステムも前に出て攻めることが有利になるようデザインされている。
頻繁に発生する相殺は、金属のような高音と相まってとても爽快である。
それは、差し合いの静でも一方的な動でもなく、お互いのチカラとチカラのぶつかり合いを感じさせてくれる交撃という感覚だ。


桜花「ハァッ!」
烈火「おもしれえ嬢ちゃんじゃねえか!」
(言ってない)
相殺は絵になりドラマを生む。


アクセルゲージ

指南書(マニュアル)より。
画面下部キャラ顔の横にある車のタコメーターのようなゲージがそれだ。
まさしく加速していくバトルを表現している。

僕はギルティギアで初見だったが、前進するほど増加し、後退するほど減少する。
ゲージの量がなにに影響するかは作品毎に異なるが、キャラの基礎スペックや特殊行動のリソース増減などが多い。
多ければ有利に、少なければ不利になる。

このシステムはおそらく、待ちや逃げといった消極的なプレイを抑止するために生まれたのだとおもわれる。
積極的に攻めたほうが有利な仕様にすることで、ゲームを動かす意図があるのだろう。
ただ、本作の仕様では唯一ではないかとおもう点がある。

それは、体力の減少である。

アクセルゲージは、タコメーターのようなゲージで表され、ニュートラルとなる水平より下がると体力が減り始める。

僕も格ゲーを網羅するほど詳しくはないが、後ろに下がり続けるとライフが減る仕様などお目にかかったことがない。
最初、バグか!?    とおもったほどである。
指南書に記載されていたので、仕様でした。
行動に制限(ゲージ消費行動)や攻撃力減少なら見た気もするが、ここまで重いペナルティーは初めて見た。

格ゲーに限らず多くのゲームで、後ろに下がったり逃げることにペナルティーを課している作品はそう多くない。
場合によっては、戦略や戦術の一部としてデザインされていることもあるからだ。
これは、CPU相手ならさほど問題はない。
だが、こと対人戦になると困ったことになる。
お互いに逃げや待ちに徹するとタイムアウトまで消極的な決着の付け方になり、面白味のない展開になる。(ギャラリーにとっても)
ただ、多くのプレイヤーは負けたくないという心理からダメージやリスクを避けようとそうしている。
であるなら、待ちや逃げが攻めることよりリスクがあると感じれば自然と抑制される。
それをシステムとしてデザインしたのがギルティなどに代表されるテンションシステムであり、本作においてより直接的に体力減少という強力なペナルティーとなっている。


攻め合いゲーを支えるシステム


指南書(マニュアル)より。
ワンボタン必殺技など昨今のモダンスタイルを採り入れている。
初心者も楽しめるようにとの配慮は大切。
特筆すべきは一般的な前歩き操作がダッシュとしてデフォルトになっているところ。
基礎システムレベルでコンセプトデザインがされている。


とにかく攻める、反撃するデザイン。
前へ!    そして撃て!!


その他にも互いに攻めることをサポートするシステムがある。

『剣撃対抗』はガード、ヒットに関わらずスタミナゲージを消費して相手との距離を離す。いわゆるノックバックの任意強化だ。
これも、やられている側がなにもできないストレスを軽減している。
受け側の干渉要素は、とくにコンピューターゲームという媒体において重要だ。

『剣撃走破』は(プレイした感じだと)相殺判定を出しながら接近する技のようだ。
相手の攻撃に潰されることなく接近に持ち込める。


通常技では間を置くと回復される。
確実なダメージのために(超)必殺技は必須。
 ダッシュと合わせてスタミナを消費する。

確実性のあるダメージソースのために必殺技や超必殺技は重要であり、それにはスタミナを消費する。
攻撃を受けてもスタミナは減るし、アクセルゲージがマイナスに振れても減る。
下がれば減るし、待っても自然回復の効率は悪い。
最適解は、ダッシュ(剣撃走破)と(超)必殺技で消費するスタミナを前進することで増加したアクセルゲージと超必殺技ゲージ回転率、攻撃することで回収するサイクルになっているのだ


これらは、本作の『前へ、攻める』を体現したものだ。
個々の要素が役割を果たし組み上がることで剣撃クロスゾーンという作品は生まれている。
勝つためには、前進し、攻めなければならない。

・デバッグモード搭載
本作のデザインに関することではないが、面白いものにデバッグモードがある。
これは、キャラの行動内容の内部データを表示して見ることができる。
中でも面白かったのが、判定グラフィックの表示と停止させてからの1フレーム単位でのコマ送りだ。

キャラの食らい判定、当たり判定が色と形で可視化されている。意外なものもあり、見ていて面白い。
1フレーム単位で進めて変化を確認も可能。
パンツも1フレーム単位で鑑賞可能。


格ゲーというのは、実際のグラフィックと判定のギャップから「なんで今の当たんねん!」とか逆に「なんでスカるねん!」という理不尽を覚えることもままある。
これは弾幕STGなどでは避けやすくするためとかバランス上の理由がある場合もある。
本作は特にモーションが速いので、どのポーズの流れがあり、どこで判定が変化しているのか掴みにくい感があった。
1フレーム送りを使うと、フレームを静止画として確認できるので一目瞭然だ。
プレイングで掴んでいくのも基本だが、データ前提のガチ勢からすれば攻略サイトのような機能の側面もあるかもしれない。
『デバッグモード』とあるように、本来は開発用の機能だとはおもうが、世界の秘密を知ってしまったような背徳感が面白かったので記しておく。


時間の経過という世界観の表現

本作は早期アクセス版ということで、実装ステージはひとつのみとなっている。
だが、時間帯を変えることで3パターンのステージ差分を作っている。


昼。
ごはん食べたら眠くなるよね。


個人的に好きな夕方。
茜色に染まる…ん?    それなんてギャルゲ?


夜。
色合いが若干魔界チック。

直接対戦に関わることではないが、雰囲気もあそんでいて楽しい要素のひとつ。
ルールやシステムだけがゲームのすべてではない。

本作プログラマーの秋原やなぎ氏がnoteで記事にしていた記憶があるが、格ゲーというものも世界観を表現するジャンルとしてある、と述べていた。
それはなにも物語やキャラばかりではない。
様々なステージは街並みや通りすがりの道、ボスの居城まで風景としての世界を表す。
そして、忘れがちだが『時間』という概念も基礎的な世界観の構成要素のひとつだ。
格ゲーではキャラ同士が戦っている訳だが、もちろん時間も流れている。
同じ場所でも時間帯により違う表情を魅せてくれる。
制作コスト的にも差分修正でボリューム感を出せるメリットがある。


胸部

すごい。


臀部

やばい。


ほんとうに、ありがとうございました。




気になった点

本作はあくまで『早期アクセス版』であり、開発途中である。
なので、未実装なところがある。
加えて、サークルが作りたいモノ、方向性というものがある。
なので、これはあくまでN.K.個人の消費者、一プレイヤーとしての感想になる。


・相殺の効果
現行では、演出以外では相手の攻撃を無効化するあくまで防御的な効果を感じる。
本来のコンセプトからすれば、相殺すればするほどテンションボルテージが上がって攻撃力も上がるような攻撃的な効果があるとマッチするような気がした。

・効果音
これは、未実装なものについてと、実装されているが変えたほうがよいのでは、とおもうものがある。
未実装については、ダッシュの音がなかったこと。(正確には開始のザッという音はあるが、ラン状態のタタタタタッ的な音がない)
執筆時点では使用キャラは3人だった。
詳しいところはわからないが、そこまで手間なのだろうか?
走っていて音がしないというのは、おもったより気になった。
手応えというか、動かしたリアクションとして音というのは結構重要ではないかとおもう。
歩きで無音の作品はあるが、走って無音はしっくりこない感じがした。
完成版では搭載されるだろうが、500円とはいえ有料である点から挙げさせて頂いた。
プレイして、ちょっと寂しいなと感じた。

実装されているもので気になるのは、攻撃のヒット音がある。
弱、中、強、特大と種類があるが、あまり差がなく(特大はすこし違う)、どれもペシとかパシッとか軽い感じがする。
拳だけでなく刀の斬撃でも同様なので、感触に爽快感が感じられにくかった。
暫定なのかもしれないが、こちらも有料である点を考慮して挙げた。
打撃でも中、強となるにつれゴッ、ドガッなど段階的に強くなってほしいし、刀ならザシュッといった斬った感がほしい。
逆に相殺の高音はなかなか気持ち良い。
引き立たせるために抑えたのかもしれないが、音の質や個別音量を相対的に変えれば全体的な爽快感を上げつつ差別化はできるのではないだろうか。

・BGM
ステージ曲に和風とロックテイストなものなどあり、格ゲーらしくテンションが上がる。
タイトル画面の曲が聴き込めるエモさがあるので、すぐに開始せずじっくり最後まで聴いてみてほしい。変調が良い。
これアレだぞ。
エンディングで流すとエモいヤツだぞ。

・ボイス
烈火の渋い声と紗絵の元気のある声がイメージに良くあっている。
やっぱ格ゲーは技名しゃべってほしいよね!
桜花ちゃん楽しみにしてます。


・ストーリーモードについて
おそらく使用キャラ人数がそろっていないので未実装なのだとおもうが、個人的には一人であそぶ時のモチベーションとして大きいので作りかけでもいいから見てみたかった。
ボッチが格ゲーすんなだと?    表にでろ
(試合開始前の掛け合いボイスや勝利後テキストセリフなどはある)
マニュアルにキャラ別プロローグみたいなものはあったので、ゲーム内でそれを簡易的でも出してほしかった。
興味が持てれば、完成版の購入動機にもつながるかとおもう。


早期アクセス版現行3キャラ。
枠から察するに6 キャラ(+隠し)だろうか?
下の真っ黒エリアも気になるが……。
キャラたちの物語が楽しみだ。


総評『剣撃クロスゾーンが提示したもの』


本作は特徴的なシステムを搭載し、訴求ポイントも具体的に示している。
逃げや待ちを抑止し、コンボすら否定した先にあるものがデファクトスタンダードに対するカウンターとしての新たな格ゲーの萌芽なのか。完成がとても楽しみである。
興味を持たれたかたは、ぜひプレイしてクロスゾーンを感じてみてほしい。

プログラマーの秋原やなぎ氏が述べられていたが、色々な作品に触れて見えてくる『自分にとって納得のいく形』。
それは、市場にないなら作るしかないという創作動機のひとつの原点としてとても純粋なもののように感じられた。
プレイヤーにどう受け取られるかはわからないが、ぜひその想いを大切に作り上げてほしいとおもう。
格ゲー好きの仲間としても、創作者としても、そう願う。



※余談

ユーザーサポートについて

これはゲーム内容に関わることではないが、この度、当商品をプレイするにあたって起動できないという問題が起きた。
これは、僕の使用パソコンがオフライン利用であったことに起因すると推察される。
開発ツールで作られた当作品をプレイするためにはオンラインでダウンロードしながらインストールするものが要った。
が、僕はオフライン環境なのでできなかったのだ。
半ば諦めていたのだが、やなぎ氏(サークルプログラマー)に伝えたところ、

出来る限り早急に対応します!

との回答がきた。
この時点でも僕は、表向きはそう答えても「令和の世にオフラインとかサポート以前の問題だろ」
とおもわれてるんだろうなー、と諦めていた。

が、二、三日後、連絡がきた。

「オフラインでプレイできるよう用意しましたので、こちらをダウンロードしてください」

!?

(少年マガジン風)


たしかに500円とはいえお金を払いはした。
が、配信コンテンツのオフライン環境の動作保証に対する義務など今の時代ありはしないだろう。
せいぜい返金対応が関の山。
それをしてくれたのだ。
とてもありがたかった。
企業ではなかなかむつかしい個別に対するサービスは固定ファンを生み、サークルにとっても力強いフォロワーとして基盤を支えてくれるちいさな芽となる。
面倒なこともあるとおもわれるが、ぜひこちらも大切にしていってほしい精神だ。


※余談2

お家でみんなとゲームという失われた懐古。

指南書(マニュアル)のイラストより。
デフォルメされたかわいらしいキャラ。
1コマにキャラの性格がよく表れている。
昔はこうやって友達とあつまってワイワイゲームをあそんだものだ。


上の画像は、マニュアルに掲載されていたものだが、これを見てすこし懐かしい気持ちになった。
現在はネットが当たり前の世になり、アーケードでも家庭用でも遠くの見知らぬ相手と物理的な距離の制約をなくしてゲームを楽しむことができるようになった。
だが、ネット普及以前では、ゲーセンや友達の家で顔を突き合わせて騒がしくゲームをしていたことが多かったとおもう。
今ではネットでも相手のリアクションを見ながらあそべる素晴らしい世になった。
だが、同じ空間に集まって一緒にゲームをあそぶというのは、独特の共有感覚があったようにも感じる。
それはきっと、画面越しにはないなにかがあったのだろう。
老人の懐古、幻想かもしれないが、イラストを見てふと、そんなことを思い出した。



※2024.12.24
加筆修正。

※2024.12.15
初稿。


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