スギと広葉樹の混交林ー蘇る生態系サービス清和研二
いつも山を見るたびになんとかならんかな,と思います。
車を走らせると,素人目にも手入れの悪い杉山,竹林だらけでうんざりします。
無駄なお金があったら,全国の山に税金を投入すべし!いつも思っています。
「国土防衛!」という勇ましい人たちがいますが,そんな人たちには文字通りの「国土」を守る山仕事に従事して欲しいものです。
さて,本書は20年にわたるフィールド試験をもとに,「生態系サービス」の復活を図る人工林の管理法を示しています。
杉の人工林を強間伐して,広葉樹の混ざった山,杉の自然林に近い山を作る。
そうすると,
土壌中に硝酸態窒素が残らない
細根が増える
葉っぱが増える
葉の窒素量が増える
落ち葉の分解が速くなる
土壌へ水が通りやすくなる
というものです。
実験結果としては以上です。
このような人工林では,
水質浄化が図られ,生産力は向上するのだそうです。
さらに,洪水防止,水源涵養が図られ,
クマも里に下りてこないと言います。
後になるにつれて,だんだんオーバーディスカッションかな,とも思います
(〜だろう,が増えてきます)が,筆者の語り口はとても魅力的です。
サスティナブルで,長期的に見た場合コスパが良い,そして何より人間にとって心地いい,そんな森を作りたい,という森林愛にあふれています。
そして何よりも実験の楽しさが伝わってきます。
条件の良い山を見つけ,反復も確保した上で管理法に介入する。
フィールドを確保した時点でワクワクします。
その後,試行錯誤しながら,学生とともに和気藹々と調査している感じが,とても羨ましい。
良い実験はシンプルな設計から生まれるのだなとつくづく感じます。
本書の最終目的は,これからの時代にふさわしい,人工林の管理法の提案です。
しかしその管理法は,決まり事だけのマニュアルではなく,ある法則に則ってゲームをプレイする感じです。
管理する人が,未来の森を想像しながら,ワクワクして管理する,そんなやり方だと思います。
KLARIの目指す農業と通じるものがあり,楽しく読めました。
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