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MMTとは何だったか

 現代貨幣理論(MMT)は、先進国ではインフレ率が許容される限り国債発行できるから「税は財源ではない」と主張し、ブームとなった。しかしながら、MMTを公式に採用したスリランカが破綻したことで、少なくともMMTには持続可能性はないことが明らかになった。このMMTブームとは何だったか、振り返ってみよう。

MMTの本質は、現代版社会主義だった

 社会主義とは(共産主義と同義)、革命により生産手段を国有化するなど大きな政府を実現することにより計画経済を行う。MMTはどうだろうか?
MMTerは、政府は通貨発行権により得た財源で莫大な財政支出を行えと主張している。これは社会主義思想における計画経済の発想だ。あえてMMTを"新"社会主義と呼ぼう。

JGPとはこの世の悪夢だ

 MMTが社会主義と違うのは、既存の資本主義頼みであることだ。冒頭でも述べた通り、わが国が先進国でなくなったらMMTは成り立たない。それはMMTerたちも理解している。じゃあどうするかというと、MMTerは低賃金労働者には「資本家の下で低賃金で働かなくていい」と甘言を囁き、彼らを公務員にして最終解決を図る。これがジョブ・ギャランティ・システム(JGP)というものだ。これは勤労者が社会的に怠け者の面倒を見るという悪夢のような社会制度である。

ケインズは死んだ

 ツァラトゥストラはこう言った「神は死んだ」と。
 MMTerは節操がないから、困ったら偽ケインジアンに変身する。そして有効需要論だけ切り取って、財政支出を正当化してしまう。MMTerにしばしば利用されたため、あたかもケインズ経済学はMMTを肯定しているかのごとき誤解が広まった。この現象を筆者は「ケインズは死んだ」と表現するのである。

最後にMMTはなぜダメなのかおさらいしよう!

 取引の本質は物々交換であり、通貨はそれを媒介するだけである。したがって、通貨量を増やしても、物価が上昇するだけで取引の経済的実質には何ら影響を与えない。したがって「政府の赤字は国民の黒字」と通貨をばらまいても本質的に無意味なのである。

 なお悪いことは、急激な物価上昇により通貨の信用が失われてしまったら、経済が麻痺してしまう。さらに原油を物々交換で購入することはできないから電気が止まり、人がバタバタ死ぬ。預金が紙屑になるレベルの話では済まないのである。

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