見出し画像

連載~時間に負けた男~ 4話 

部屋の中央で携帯電話を握りしめそわそわする男
ただ鉄の格子がはめられた窓を見上げると、まだ日差しが低く早朝のようだ。

「こんな朝早くに電話したら、きっと嫌われるだろう」
男は電話したい気持ちを必死に耐えた。

何時間たったのだろう?

ここに来て、こんなに時間がたつのが長いと感じたことはない。

「もう、いいだろう」
男は携帯電話に昨日と同じように自分の電話番号を押した。

「プルプル、プルプル」
よし!
今日もちゃんとつながるようだ。

後は昨日の男がちゃんと電話に出てくれればいいが、男は携帯を両手で大事そうに持ち耳をすました。

「プルプル、プルプル」
呼び出し音はなっているが、中々出ない。

もしかすると昨日長々とくだらない話をしすぎて嫌になったのかな

お願いだもう一度でいいから出てくれ!

今度はもっとましな話をするつもりだ!

男は息を殺し電話の呼び出し音を聞いている。

時間は恐ろしく長く感じた。

そうこう思っている時、突然呼び出し音がやんだ

「もしもい!」
「もしもし!」
男はたまらず携帯に握りしめ必死に呼びかけた。

いかん、こんな取り乱した声を上げて、おかしな人間だと思われたら、電話を切られてしまうかもしれない。

落ち着くんだ。

男は必死に、はやる気持ちを落ち着かせた
「もしもし!」

すこし間があいた時、電話から男の声がした。

「あっ、もしもし」
昨日の男の声だ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?