臨床推論 Case21
Clin Med(Lond). 2016 Apr; 16(2): 207.
PMID: 27037400
【症例】
56歳女性
【既往】
アトピー、繰り返す蜂窩織炎、リンパ浮腫、肺塞栓
【現病歴】
⚫︎ 1ヶ月前から大腿部に有痛性の潰瘍を認めていた
⚫︎ 痛くてベッドから離れられないような状況であった
⚫︎ 蜂窩織炎や圧潰瘍の診断で抗生剤使用したが改善なし
⚫︎ 肺塞栓になり半年前からワーファリンを開始している
【現症】
⚫︎ バイタル安定
⚫︎ 大きい有痛性の放射状の紫色の皮疹あり
⚫︎ 中心部は壊死して周辺は熱感と紅斑あり
⚫︎ WBC11000 CRP22.8mg/dL
⚫︎ 腎機能と副甲状腺ホルモンの値は正常
⚫︎ INR2.8
⚫︎ 生検した結果は以下の通り
血管内に石灰化病変あり
What’s your diagnosis?
【診断】
カルシフィラキシス
【経過】
⚫︎ 抗生剤とベタメタゾンクリームと圧迫バンドで対処した
⚫︎ 徐々に潰瘍は大きくなり敗血症となった
⚫︎ ワーファリンは中止して集学的治療をしたが改善なく入院7週目に亡くなられた
【考察】
⚫︎ カルシフィラキシスは致命的になる怖い皮膚壊死疾患である
⚫︎ 皮膚血管の石灰化と閉塞を起こし、結果皮膚表在や皮下組織が壊死る
⚫︎ 病態は不明
⚫︎ 末期腎不全、透析患者の4%も起きうるという報告あり
⚫︎ まれにnon uraemicなタイプの報告あり以下の素因が言われている
⚫︎ 副甲状腺機能亢進症28% 悪性腫瘍22% など
⚫︎ 今回は肥満・ステロイド・ワーファリンがリスクになったのかもしれない
⚫︎ ワーファリンはビタミンK依存性蛋白であるMGPを阻害する
⚫︎ その結果、石灰化が起きやすい状態になるとマウスで証明されている
⚫︎ しかしワーファリンは”ワーファリン誘発性皮膚壊死”という疾患概念もあり
⚫︎ 当初はそのように判断したが同じようにカルシフィラキシスかどうか判断がつかなかった報告が散見される
⚫︎ 両疾患とも見た目は似ており、脂肪の多い場所にできやすいというのが特徴である
⚫︎ 違いはonset
・ワーファリン誘発性皮膚壊死は初日から生じ、ピークは3日目におきる
・10日以上たって生じることはほとんどない
⚫︎ カルシフィラキシスの治療は感染、副甲状腺機能亢進症の治療など誘発因子の除外である
⚫︎ ビスホスホネート製剤で完治した報告あり
⚫︎ 高圧酸素療法も有効であった報告あり
⚫︎ 確立されたものはないため色々なものがチョイスされている
⚫︎ 死亡率は50%以上である
⚫︎ そもそも診断がつかない、誤診される、治療しても全くよくならない、などに起因する
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