臨床推論 Case3
Am Fam Physician.2005 Feb 1;71(3):534-6.
PMID:15712627
【症例】
44歳男性
【主訴および現病歴】
⚫︎ 筋肉痛,右肩痛,右手関節痛が出現した 他に嘔気,咽頭痛,悪寒あり
⚫︎ ドラッグや渡航歴なし
【現症】
⚫︎ 手首は腱鞘炎で肩は熱感、紅斑、疼痛あり
⚫︎ 圧痛を伴う0.3-0.8cmの出血性膿疱が手と足にあり
⚫︎ WBC13400 ESR56
血培は陰性
⚫︎ 膿疱の生検で白血球破砕性血管炎と血管内の塞栓を認め、血管周囲に炎症を認め表皮壊死を認めた
⚫︎ 膿疱のグラム染色は陰性であった
What's your diagnosis?
【診断】
播種性淋菌感染症 Disseminated gonococcal infection
【考察】
⚫︎ 淋菌の1-3%で生じる
⚫︎ first form
・腱鞘滑膜炎、皮膚炎、多発関節痛を認める
・化膿性関節炎は伴わない
・発熱、寒気、嘔気を伴う
・腱鞘滑膜炎は多発する
・皮疹は3-20個くらい出現し、1cm以下の有痛性の紅斑である
これは24-48時間で出血性膿疱になる
手や足の小関節付近にできやすい
⚫︎ second form
・皮膚所見を伴わない化膿性関節炎を認める
・たいていは無熱で非対称性の多発関節炎を呈する
・臨床像は違うが、overlapすることもある
・他に肝炎、髄膜炎、IEなど全身臓器を障害することあり
⚫︎ 診断は臨床像と病歴である
⚫︎ 女性の方が男性よりも3-4倍なりやすい
⚫︎ 女性は無症状で咽頭、子宮内膜、尿道、肛門にcolonizationしているからである
⚫︎ また月経、妊娠、骨盤手術、子宮内デバイス挿入、先天性・後天性の免疫不全なども要リスク因子となる
⚫︎ 血培は生えにくい
⚫︎ 尿道、子宮頸管の培養で陽性になりやすい
培養は75-90%である
⚫︎ 全粘膜部からの培養は必須である
⚫︎ 関節、皮疹、血液の培養はless likelyで25-50%である
⚫︎ 関節液のPCRも参考になるかもしれない
⚫︎ 治療は点滴を24-48時間し、改善すれば経口で合計7日間となるよう行う
⚫︎ 初めはセフトリで治療し、経口でシプロ、レボなどに切り替える
⚫︎ 通常は早急にかつ完全に回復する
⚫︎ 化膿性関節炎があればドレナージや長期での抗生剤が必要になる
⚫︎ クラミジアの治療も併せて行う
⚫︎ 出血性膿疱、腱症滑膜炎、関節炎の他の鑑別は以下の通り
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