社会的愛着と薬物依存の関係とは?
あなたに夢中、というような言い回しはよく聞きますが、実際のところ、誰かに夢中になっているときには身体の中でどのような変化が起こっているのでしょうか。
今回取り上げる論文は、社会的愛着と薬物依存の共通点について論じたものになります。
この論文によると、社会的愛着と薬物依存の間には以下の同じ神経伝達物質が関わっていることが述べられています。
ドーパミン
人間のモチベーションに関わるシステムとして脳内報酬系と呼ばれるものがあります。ドーパミンはこのシステムを駆動する働きがあるのですが、ドーパミンの代謝に関わるシステムが、社会的愛着でも薬物依存でも変わってしまいます。具体的にはドーパミン受容体のバランスが変化し、ドーパミンの働きを強めるDR1が増え、働きを弱めるDR2が少なくなります。
オピオイド
オピオイドはいわゆる脳内麻薬と呼ばれるもので、陶酔感や安心感を引き起こす働きがあります。社会的愛着であっても薬物依存であっても、このオピオイド受容体が依存や愛着の維持・形成に関わっています。
副腎皮質刺激ホルモン
人間の体にはストレスに対応する仕組みとしてHPA軸(視床下部-下垂体‐副腎皮質)があります。これはストレスがかかった時に血圧を上げたり、覚醒レベルを高めたりして、ストレスに負けないように体と心を調整するシステムになります。副腎皮質刺激ホルモンというのはこのHPA軸に関わるホルモンですが、薬物離脱時や愛着対象の不在時の反応に関わっています。
このように社会的愛着と薬物中毒は神経伝達物質の面から考えても様々な共通点があることが述べられており、社会的愛着は依存の一形態なのかなと思いました。