失恋は手痛いものですが、私達の脳はどのようにしてこの痛みを和らげているのでしょうか。今回取り上げる論文は、社会的拒絶に関わる脳の仕組みについて調べたものです。
社会的拒絶と受容に対するμ-オピオイドシステムの反応
Hsu, D. T., Sanford, B. J., Meyers, K. K., Love, T. M., Hazlett, K. E., Wang, H., ... & Zubieta, J. K. (2013). Response of the μ-opioid system to social rejection and acceptance. Molecular psychiatry, 18(11), 1211-1217.
私達の身体には脳内麻薬と呼ばれる心と体の痛みを和らげる生理活性物質があります。これは内因性オピオイドと呼ばれるもので、天然の麻薬成分とよく似た物質が脳に働きかけて、心と体を調整するものになります。
実験で社会的拒絶を受けている時の脳の変化を調べてみると、感情の認知や調整に関係する脳領域(扁桃体、視床中心部、線条体、中脳水道周囲灰白質)でオピオイド受容体が活性化すること、
さらにレジリエンス(ストレスからの回復力)が高い人ほど、これらの脳領域のオピオイド受容体の活性化が高いことが示されています。
これらの結果から、社会的拒絶の痛みを緩和するために、脳内麻薬である内因性オピオイドが働くのではないかと論じられています。
明日読む論文:
健康な成人における恋愛の拒絶と受容に対する一般的な神経反応Hsu, D. T., Sankar, A., Malik, M. A., Langenecker, S. A., Mickey, B. J., & Love, T. M. (2020). Common neural responses to romantic rejection and acceptance in healthy adults. Social neuroscience, 15(5), 571-583.