自己超越に影響するものとは?
マズローの欲求の階層は有名だが、彼は晩年、自己実現欲求の上に来るものとして、自己超越という概念を提唱している。
この自己超越とは、社会や世界など、自分を超えた存在をよりよい状態にしたいという欲求だが、どのような要因が自己超越感覚に影響しているのだろうか。
ある研究では、愛の未熟さと文化的要因が自己超越とどう関係するかについて調べている。
ちなみに愛の未熟さは以下の質問票で測られる。
1. もし配偶者や恋人が私を愛さなくなれば、私も相手を愛さなくなるだろう。
2. 親しい人が私の気に入らないことをすると、その人への愛情が減る。
3. 愛を受けることは、愛を与えることよりも良い。
4. 見返りを期待せずに愛することができる。
また文化的要因は、垂直的社会(競争、支配などに重きをおいたもの)であるのか、あるいは水平的社会(平等、協調を重きをおいたもの)であるのかを評価している。
さらに肝心要の自己超越性については以下の質問で回答させ、その傾向を調べている。
私の心の平穏は以前ほど簡単に乱されなくなった
物質的なものへの執着が減った
怒りっぽさが減った
自己感覚が他者や物事に依存しなくなった
敵に対してさえも、より思いやりを感じるようになった
人生により多くの喜びを見出すようになった
静かな瞑想に取り組むことが増えた
過去と未来の世代とのつながりをより強く感じるようになった
自分の人生がより大きな全体の一部だと感じるようになった
他人の自分に対する意見を気にしなくなった
結果としては、愛の未熟性が高いほど、また文化的垂直性が高いほど、自己超越性は低くなることが示されている。
この結果だけを見ると、競争社会で生きることは、自己超越性を低下させるように思われるがどうなんだろう。
追って、自己超越性について調べていきたい。
【参考文献】
Le, T. N., & Levenson, M. R. (2005). Wisdom as self-transcendence: What's love (& individualism) got to do with it? Journal of Research in Personality, 39(4), 443–457. https://doi.org/10.1016/j.jrp.2004.05.003