STAT3:腫瘍細胞と免疫細胞の戦いをコントロールするもの
免疫系というのは自己と非自己を分けるシステムである。このシステムでは腫瘍細胞は非自己と認識され、各種免疫細胞の働きによって排除されるようになっている。通常であれば腫瘍細胞の周りに免疫細胞が集まって、小さな戦場のような様相を示すが、これは腫瘍微小環境と呼ばれる。
今回取り上げる論文は、この腫瘍微小環境での戦いを調整する物質であるSTAT3の働きについての総説論文である。
がん細胞と免疫細胞間のクロストーク:腫瘍微小環境におけるSTAT3の役割
Crosstalk between cancer and immune cells: role of STAT3 in the tumour microenvironment
STAT3はsignal transducer and activator of transcription 3(シグナル伝達兼転写活性化因子3)であり、他の細胞からのシグナルに反応して、細胞の遺伝子発現を調整する役割がある。
具体的には腫瘍細胞の成長や増殖を促したり、あるいは免疫反応を抑えたりする役割がある。
がんが発症した状態ではこのSTAT3が腫瘍微小環境で活性化されており、そのため腫瘍細胞は増える方向へ、免疫反応は弱まる方向へシフトしてしまうと。そのためSTAT3を標的にした治療は腫瘍細胞の増殖を抑制しうる可能性があると。
Q: STAT3と精神疾患の関係はあるのか?
薬物未治療の統合失調症患者末梢血単核球におけるIL-6/STAT3シグナル軸への抗精神病薬の影響
Impact of antipsychotic medication on IL-6/STAT3 signaling axis in peripheral blood mononuclear cells of drug-naive schizophrenia patients