遅延割引と発達障害
人間、後から手に入るものよりも今すぐ手に入る物がいい。
これは自然の摂理である。
しかし、人間は進化の過程で自らを飼いならしてきた。自己家畜化と言われる現象である。その中で、後から入るものもある程度待てるように、自分たちの脳を穏やかに仕立て上げてきた。
行動経済学で遅延割引きと呼ばれるというものがあるが、これはある意味、飼いならしの程度を測るものとも言える。
遅延割引きは後から手に入るものの価値を割り引いて感じる傾向だ。明日手に入るものはいま手に入るものよりも2割ほど価値が低く感じられ、1週間後と言われると、その価値は半分程度になってしまう。そういった心の仕組みが遅延割引だ。
そしてこの遅延割引には個人差があり、あっというまに価値がダダ下がってしまう人もいれば、1年でも10年でも待てる人もいる。
遅延割引が低い人間(待てる人間)は現代社会では適応力が高いかもしれないが、自然界に放り出されれば、あっというまに遅延割引が高いに人間にかっさらわれてしまうだろう。
そしてADHDは一般に遅延割引が高いことが知られている。
では、ADHDの遅延割引率を低くすることは出来るのだろうか。いくつかの方法では可能である。認知訓練なども一定の効果があるが、メチルフェニデートやアンフェタミンなどの薬物によっても低く出来ると言われている。
これらの薬物によってドーパミンのコントロールが適正化されるからではないかとも考えられている。
しかし、ふと、不自由なのは社会なのだろうか、あるいは個人なのだろうか、と思うことがある。おそらく人間たちは未だ探索中なのだと思う。遠くない未来には、社会と個人のよりよい関係が築かれると信じたい。
【参考文献】
Koffarnus, M. N., Jarmolowicz, D. P., Mueller, E. T., & Bickel, W. K. (2013). Changing delay discounting in the light of the competing neurobehavioral decision systems theory: A review. Journal of the experimental analysis of behavior, 99(1), 32-57.
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