感動の脳科学:特別な絵画はどう違うのか?
感動こそが人生だ、と言い切れるほどの自信はないが、人生の本質的な欲求は感動にあるのではないかと考えることがある。
感動を引き起こすものは様々である。オリンピック競技もそうかもしれないが、絵画を見て感動することもあるだろう。この時、脳というのはどのように活動しているのだろうか。
ある研究では、被験者に様々な絵画を見せ、とりわけ感動した絵画では脳活動どのような特徴があるかを調べている。
実験では、それぞれの絵を四段階で評価するのだが、最も高い評価は際立ってデフォルトモードネットワークの活動が高かったことが示されたのだ。
デフォルトモードネットワークというのは「こころ」そのものに関わる領域であるが、その中でも価値判断の中枢である前頭眼窩野と、主観的意識の中枢である内側前頭前野の活動が最高位評価だけに際立って強く反応したというのだ。
自分の体験からしても、ちょっといいと思う絵と、激しく心が動かされる絵は感じ方がぜんぜん違うが、特別な絵というのは、自我の中枢を激しく動かすもののようである。感動は英語ではmovingと言われるが、確かにその通りかもしれない。
今日一日、なにかに感動することができるだろうか。内側前頭前野を働かせる機会を持ちたい。
【参考文献】
Vessel, E. A., Starr, G. G., & Rubin, N. (2013). Art reaches within: aesthetic experience, the self and the default mode network. Frontiers in neuroscience, 7, 258. https://doi.org/10.3389/fnins.2013.00258