アイデンティティは私達を幸せにするのか?
人間とは何かということを一年中考えている。そこでしばしばテーマに上がるのがアイデンティティだ。
アイデンティティはヒト特有である。イヌは自分はどのようなイヌであるかの自覚を持たない。おそらくサルもキジもアイデンティティを持たないだろう。なぜヒトだけがアイデンティティというものをもち、これを巡って一喜一憂するのだろうか。
ある研究では、自分の民族的アイデンティティを明確に持っている方が幸福度が高いことが報告されている。
アメリカの青少年を中心にしたアンケート調査の結果から、黒人やヒスパニックなどのマイノリティは、アイデンティティが確立されている傾向が高く、人生の目的や自己評価も高い傾向が見られたのだ。
それに対して白人やネイティブアメリカンのグループは民族的自覚が低く、人生や自己評価が低くなりがちであったという。
そうであれば民族的アイデンティティを持ったほうが幸せになれそうな気もするが、これは社会的な困難に打ち勝つための適応的な心理現象だとも考えることはできる。
アイデンティティは人を幸せにするのだろうか。それともヒトは幸せになろうとしてアイデンティティを獲得するのだろうか。
またひとつ考えてみたいと思う。
【参考文献】
Martinez, R. O., & Dukes, R. L. (1997). The effects of ethnic identity, ethnicity, and gender on adolescent well-being. Journal of youth and adolescence, 26(5), 503-516.