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チンパンジーから考える共感の起源

人間は鬼にも仏にもなれる生き物である。

仲間を助ける人たちはあたかも仏のように振る舞えるが、そのような人でも他所者に対しては鬼畜の振る舞いをすることがあるからだ。

このような行動の背景には共感性が関係しているという。共感があれば他者に優しくできるが、他所者と認識することで、この共感性が発動されないというのだ。

この共感性について、ある研究ではチンパンジーのあくび伝染現象を使って調べている。

あくびの伝染現象とは他者のあくびを見ていると、ついつい自分もあくびをしてしまう現象だが、これは共感性の高さを反映していることがヒトや動物を対象とした実験から分かっている。

ある研究では、以下の条件でチンパンジーのあくび伝染現象がどの程度引き起こされるかを調べている。

1)親しいヒト
2)見慣れないヒト
3)仲間のチンパンジー
4)見知らぬチンパンジー
5)見たことのない霊長類(ヒヒ)

結果としては、親しいヒトや見慣れないヒト、仲間のチンパンジーではあくび伝染現象が起こったが、見知らぬチンパンジーや見たことのない霊長類(ヒヒ)では起こらなかったことが示されている。

その理由としては、仲間のチンパンジーや餌を上げる関係であるヒト科全般は好印象があるため、共感性が発動するが、見慣れないもの(ヒヒ)に対しては関係性が築かれていないので共感性が立ち上がらないこと、

また見知らぬチンパンジーに対しては、外国人恐怖症のような不安感や敵対心が生じるため、共感性が抑制されるのではないかと論じられている。

この結果を見ると、共感性を立ち上げるには、まずは相手と関わる機会を持つこと、見知ることが大事なのかなと思うがどうなのだろう。

次の世代にはどのような相手であってもあくびが伝染するような社会になってくれればいいな、と思う。

【参考文献】
Campbell, M. W., & de Waal, F. B. (2014). Chimpanzees empathize with group mates and humans, but not with baboons or unfamiliar chimpanzees. Proceedings. Biological sciences, 281(1782), 20140013. https://doi.org/10.1098/rspb.2014.0013

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