虐待でオキシトシン関連遺伝子が変わり、脳の大きさが変わり、愛着障害が引き起こされる
エピジェネティクスという概念がある。
私達の体や心の有り様は遺伝子によって大きく制御されているが、この遺伝子は生まれた後もちょっとだけ変化する。
変化すると行っても腕が2本から3本になるというラディカルな変化ではなく、骨が成長しやすくなる、あるいはしにくくなるというような、基本設定をちょっと修飾するような変化が、いろんな刺激がきっかけとなって引き起こされることがある。
しかしながらわたしたちの体はいろんな仕組みが密接に繋がり合っているので、風が吹けば桶屋が儲かる、カリブ海で蝶が羽ばたけばフロリダでハリケーンが起こる、というように、遺伝子のちょっとした変化が最終的には心身の大きな変化につながることもある。その意味でエピジェネティクスというのは、人間のあり方を考える上で結構大事なものでものなんだろうな、と思っている。
今回取り上げる研究は、小さな頃の虐待経験が、遺伝子と脳、愛着行動にどのように影響を与えるかについて調べたものである。
虐待を受けた子供のオキシトシン受容体DNAメチル化と脳容積の変化
Oxytocin receptor DNA methylation and alterations of brain volumes in maltreated children
対象となったのは日本国内の児童養護施設に入所経験のある44名とそうでないもの41名(平均年齢:12.9 ± 2.6 歳)。
評価したのは、愛情や社会性にかかわるホルモンであるオキシトシンの代謝に関連する遺伝子(オキシトシン受容体遺伝子)と社会性に関連する脳の大きさ(前頭眼窩野)、愛着行動について。
結果を示すと下の図のように、オキシトシン受容体遺伝子が変化し、その結果、社会性に関連する脳の大きさが減少し、これが愛着行動の問題と関連していることが示唆されている。
Q: 結婚したり子供ができたりして密な関係性が生まれると、オキシトシン受容体が変化していい方向に向かうことがあるんだろうか?
明日目を通す論文:
Oxytocin during the initial stages of romantic attachment
ロマンチックな愛着の初期段階におけるオキシトシン