無快感症の脳科学
「今日も元気だ、たばこがうまい」という言葉が昔はよく聞いたが、悦びというのは元気を図る一つのパラメーターなのかなと思うことがある。
元気があればうまいものを食べたいと思ったり、酒でも飲みに行きたいと思ったりする。しかし、調子が悪い時はその限りではない。
とりわけメンタルが傾くような時には、何もしたくもないし、なにかをしても楽しくないというような状態になる。
生活の中で喜びを感じられないような状態は、精神医学分野では無快感症と呼ばれるが、これは脳科学的にはどのように考えられるのだろうか。
人間の悦びは3つの段階でできているという考え方がある。
すなわち「欲しい!」という段階と「好きだ!」という段階と、そして学習する段階である。
例えば、コスト◯で買い物をするような時には、陳列棚を見ては「欲しい!」という感情が燃え上がり、フードコートでピザを頬張っては「うまい!」という感情に胸を焼かれ、一息ついた頃には「ここは楽しい場所だ」と学習することになる。
この一連の流れが人間の悦びなのではないかというモデルである。元気がない時には、喜びを感じられなくなり、コス◯コのチラシを見ても何も感じなくなるかもしれない。
無快感症を生じる疾患にはうつ病や統合失調症など様々なものがある。しかし、無快感症のタイプや原因は千差万別であるという。
たとえば「食べたい!」という欲求がなくても、口に含めば「美味しい!」と感じる心が残っている場合も多いとのこと。
無理して欲張る必要もないが、欲が出ない時には、「欲しい」、「好きだ」、「学習」のうち、どこがうまく動いていないのかを考えてみるのもよいのかもしれない。
【参考文献】
Thomsen, K. R., Whybrow, P. C., & Kringelbach, M. L. (2015). Reconceptualizing anhedonia: Novel perspectives on balancing the pleasure networks in the human brain. Frontiers in Behavioral Neuroscience, 9, Article 49.https://doi.org/10.3389/fnbeh.2015.00049