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待てる人間と待てない人間はどう違うのか?

世の中には待てない人間と待てる人間がいるという(加えて言えば、世の中の人間を二種類に分けたがる人間とそうでない人間もいるという)。

では、これはどのようなものなのだろうか。

行動経済学では遅延割引というものがある。これは同じ価値でも、後でもらえるものは価値が割り引かれて感じるものだ。身近な例で言えば、ネットショッピングでも即日配送だと、ついついクリックしたくなるが、配送に1週間かかります、などと表示されていると、ちょっとどうしようかという気分になる。すぐに手に入るものは価値が高く感じられ、そうでないものは低く感じられる、そういった心の仕組みが遅延割引と呼ばれるものだ。

興味深いことに、遅延割引には個人差があり、我慢できな人は何に対しても我慢できないというのだ。

例えば、以下の図は喫煙者と非喫煙者の遅延割引の程度を示したものだ。

Odum et al., 2011, Fig.1を参考に筆者作成

非喫煙者であれば、300ヶ月後(25年後)の1000ドルは600ドル程度にしか割り引かれないが、喫煙者はわずか数ヶ月で同じレベルまで低下する。

そしてこの遅延割引はお金であってもたばこであっても同じようなカーブを示す。つまり、お金であってもたばこであっても、我慢するのが苦手ということになる。

ちなみに上の図は喫煙者1名、非喫煙者1名のデータから得たグラフであるので、どこまで信頼性があるかは微妙である。とはいえ、様々な研究では、我慢できな人は、対象物がどのようなものであれ我慢するのが苦手で、そこには追求行動をコントロールするホルモン、ドーパミンに関わる遺伝子が関係しているのではないかとも言われている。

世の中には我慢ができない人間がいるが、世の中で成功するのも我慢できない人間であることが多い。我慢できない者が成功できるのはなぜかと考えると、それは運だとも言いたくなるが、運+αがあるのだと思う。それは知能の高さかもしれないし(これも運だが)、他のものかもしれない。

残りの人生で、人と世の中の不思議について考えてみたいと思う。

【参考文献】
Odum, A. L., & Baumann, A. A. L. (2010). Delay discounting: State and trait variable. In G. J. Madden & W. K. Bickel (Eds.), Impulsivity: The behavioral and neurological science of discounting (pp. 39–65). American Psychological Association. https://doi.org/10.1037/12069-002

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