メメント・モリと遅延割引
人間、いつかは死ぬ。
あたり前のことだが、普段これを意識することはない。あたかも今日と同じ日が永遠に続くかのように生きている。時に人の死を理解することがあっても、自分の死を見つめることは、なかなかない。
しかし、自分の死を意識した時、人は賢くなるのだろうか、それとも愚かになるのだろうか。
ある研究では、死を意識させることで遅延割引がどのように変わるかを調べている。
遅延割引というのは後からもらえるものの価値を割り引いて考える心理傾向のことだ。
例えば1万円を今日もらえるのと3年後にもらえるのだったら、あなたはどちらを取るだろうか。言わずもがな、今日もらえる1万円だろう。後からもらえるお金は額面通りには受け取れないのだ。大なり小なり割り引かれて感じてしまう。
この割引率には個人差があるのだが、死を意識させることで、この割引率は低下するという。つまり、より長いスパンでの損得を賢く捉えることができるようになるのだ。
なので、もしあなたがなにかを迷っているのであれば、自分の墓のデザインなどに思いを馳せてみるのもいいかもしれない。脳内デザインが終わった後は、遅延割引率も下がってより妥当な判断ができるようになっているだろう。
メメント・モリ、死を思え。賢慮を持って、本当に大事なものを選び出していきたい。
【参考文献】
Kelley, N. J., & Schmeichel, B. J. (2015). Thinking about death reduces delay discounting. PloS One, 10(12), e0144228.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?