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友達のいる本

素晴らしい本があります。
理学博士長田武正氏の著作、保育社の「原色野草観察/検索図鑑」です
初版が昭和56年。出会ったのは地域の図書館です。
なにがすばらしいかというと、とにかく構造を細かくあらわしたひとつひとつの図版です。こまかい、美しい。そして別のページにそれらのカラー写真がちゃんとある。

ついに手に入れてしまいました。
お財布はあまり楽な状態ではないのですが、本があるのが図書館、ということにだんだん不安を感じるようになったので。

この本はかなり前までその図書館の禁帯出コーナーにあったのですが、ある時からそういう本が大幅に貸し出し可になった。おかげで私は家でこれを堪能できるわけですが、でもこれ、同じように求めている人にとってはしばしめざす本が書架から消えることになってしまう。
見たいときにあるからこその図鑑。それにその図書館にこの本がいつまでもあってくれるだろうかと考えだしたら心配が止まらなくなったのでした。

断捨離を始めるのではなかったっけ?逆に物が増えていくこの現象。
とはいえ、たくさんの植物を描いて書きまくっていきたい今。おのおのの植物の構造がどうしても知りたい。
脳内がするするほどけるように心に引っかかりなく描くためには、不安とか心もとなさは欲しくないのでした。延々とクローバーを描きたいのに、いったいどんな風に生えているんだっけと思ったら手が止まってしまう。
たくさん積んで遊び、首飾りなんか作ったのに、どういう花や葉の付き方なのかうろ覚えなんですね。描いてみるうち、なんか違う、みたいなことだけわかる。
もし、はっきりとデザイン的な確信が自分の中にあるならば、そんな細かな形状などに構わなくなると思うのです。自分が別次元の世界を作れるくらいの圧倒的デザイン力があるなら。が、正直なところそんな強いデザインの核はない。物理や自然界にそなわっている法則たちの構造を凌駕するとかとんでもないという感覚なんですね。

例えば一枝に何枚ずつ葉っぱがついてセットになるか、それが対称につくかどうか、みたいなそれぞれの「公式」を図版で知れたら、私のイメージの中の草花たちは気持ちよく茂るわけです。

この本のもう一つの良さは、子供の頃に通った二キロばかりの通学路でであった植物たちがちゃんといること。もう一度懐かしい友達に会ったような感じなのです。



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