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無印良品、マルマン、モレスキンの無地ノートからMDペーパーへ

幼稚園からの幼なじみで同級生のYさんが、文字を書いている私の手元をのぞきこんで言うには、私は「さっぱりノートの線に沿って字を書かない」らしい。前の席で後ろ向きに座ってこちらを見ているYさんに、私は「そうだよ。私は型にはまらない人間だからね。だいたいノートは無地がいいんだよ」と言う。ちょっとYさんのことが好きだった。いや、スヌーピーで知られるチャールズMシュルツの「ピーナッツ」で言えば、チャーリーブラウンとペパーミントパティのような意味でだが。そんな彼女は高校を卒業してすぐに自衛隊へ入隊した。以来、ノートといえば私は無地のノートが一番好きだ。

文具メーカーが長年苦労に苦労を重ねて開発した罫線、方眼入りのノートをさしおいて、私が一番好きなノートは無地である。無地はいい。ページの端までどこまでいっても自由である。自由。しかし、野放図に放置された筆跡は、自ら読みやすいようにある程度整えられなければならない。自由の中の不自由。ルールなき自由は自由じゃないんだよー誰かが言った、よく聞く台詞。だが真理をついている。

無印良品の無地ノート

無印良品にはお気に入りの素朴な無地のノートがある。小学校の藁半紙やとりのこ用紙を彷彿とさせるアイボリーの色みが最高である。リングで綴じられた厚い紙の表紙と裏表紙は落ち着いたダークグレー。吐き出された私の頭の中のぐちゃぐちゃなイメージをしっかりと閉じこめている。

マルマンの図案スケッチブックは絵を描くのに最高の画材である。よくテレビ局のADさんが司会者に向けて太い油性マジックで書いて見せるあのスケッチブックである。粗雑な扱いを受けがちなスケッチブックだが、水彩、色鉛筆、ボールペン、万年筆など絵の具やインクをのせたときの風合いは、もっとゆっくり時間をかけて紙に向き合ってしかるべきほど高品質である。

ハードカバーのモレスキン

モレスキン(以前の呼称はずっとモールスキンだった)といえば、私にとっては無地のポケットサイズである。それもソフトカバーでなく、ハードカバーの方。外に持ち出し、立ったまま開いて書き込むには硬い表紙でないと都合が悪いから。たくさんのモレスキンを使い捨ててきた。後で何を書いたのか自分でも読むに読めない走り書きで全てのページを埋め尽くして。

未開封のままストックしているMDノート

気が付くといつも無地のノートを探している。ごく最近になって、私はついに「MDペーパー」と出逢ってしまった。ハードカバーの無地ノート。といってまだその紙の何たるかを味わってはいない。限定版と定番品の2冊を購入し、未開封のまま大切にしまっているのだ。たくさんの無地ノートのストックを使い果たして、やっとMDノートにたどり着くのはいつになるのか。

1988年製ミドリの缶ペンケースは定価350円

「MD(ミドリ・ダイアリー)ペーパー」という、社名を商品名に冠した高品質紙で知られるミドリの文具といえば、私にとっては高校生の頃からずっと大切に使っている細身の缶ペンケースである。授業中に床へ落として、けたたましい音を立てている輩とは一緒にしないでいただきたい。大事な筆記具を収納している愛用の缶ペンケースを地面に落とすなど、私にとってありえない話である(いや、一度や二度はあるが)。

絵を描くのが大好きだった小学生時代の私は、世の中には学校で使う罫線や方眼入りの「キャンパスノート」以外に、真っ白な無地のノートがあるなんて知りもしなかったし、気にもしていなかった。「図工」で使うクロッキー帳や幼児が使うようならくがき帳の他に、小さな町のお店には、学校で使い道がないような無地のノートは置いていなかったのだ。罫線などお構いなしに文字や絵を書き殴っていた私には、罫線があろうがなかろうが関係はなかったのだが。

幼なじみのYさんが今どこで何をしているのか私は知らない。私は今も事務所の机の上のコピー用紙の裏なんかへめちゃくちゃに文字を書き殴っているし、家ではお気に入りの無地のノートをひっぱり出しては好きな絵を描いている。Yさん、世の中にはね、無地のノートっていうのがあってね、それって線からはみ出してばかりの私専用のノートなんじゃないかなって思うんだよ。

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