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鉛筆と鉛筆ホルダーと折りたたみナイフのこと
シャープペンシルがいま空前の大ブームである。うちの子も「クルトガメトゥ(クルトガメタル)」だか「エストゥエニィ(S20)」だか、低重心設計の木軸がどうだ、こっちは自宅用でこっちは学校用だとか、何本ものシャープペンシルを持っている。壊れてもないのになぜそんなに次から次へと本数が増えていくのか、呆れたコレクター状態である。
私はシャープペンシルよりも断然、鉛筆派である。というのも、折りたたみナイフやカッターナイフを使って鉛筆を削る、ほんのわずかな時間が私は好きなのだ。
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鉛筆を削る時間は、ものの数秒~数十秒。あえて鉛筆は丸く削らず、6角のエッジに合わせて芯の先まで意図的に切り立った角ができるように削る。鋭く芯先が尖り、なおかつ裾野に至るまで均整がとれた美しくシャープな切り口のエッジができあがるとうれしい。鉛筆が美しく研ぎ上がったら※、また安心して紙の上に戻れるのである。
※鉛筆を研ぐ…「削る」というが、鉛筆は「研ぐ」ともいう。個人的には名称としての「鉛筆けずり」以外は、鉛筆を「研ぐ」という方が多いかもしれない。
芯は2B~HBが好きだ。硬い芯は消しゴムをかけたときに跡が残ってしまう。メーカーにはこだわらないが、よく使う三菱鉛筆はどれも削った時に気持ちいい。時々、何かの粗品でもらったような鉛筆の中には削った時に毛羽立つ粗悪な木質のものがあって、そういう鉛筆は削っていても気持ちよくないのである。
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長くICカット社製のツールナイフを使っている。25年くらい前にネットオークションで手に入れたもので、私の他に入札者もおらず500円程度だったが、荒砥(あらと)から仕上げ砥石まで使い丁寧に研げば、どんな刃物でも相当の切れ味を持たせることができる。
折りたたみのツールナイフは人前であまりむやみに出さず、職場では普段カッターナイフを使っている。刃体6㎝以上の折りたたみナイフは刃を固定するロック機構がない上に業務上使用する目的のため、持ち歩いても銃刀法違反に該当しない※とはいえ、うっかり職務質問にでも合ってあらぬ嫌疑をかけられてはいけない。
※ 私の場合は、即座に使用できないよう袋に入れた上で、バッグの底の取り出しにくい場所に入れておく。持ち歩く際は十分注意のこと
もちろん、「肥後守(ひごのかみ)」も持っている。これなど中学生の頃に買ったものだから半端なく年代物で、刃は細く研ぎ減ってしまっているが切れ味よく、新聞紙など片手で持ってス~っと切れる。
昔はみんな小学生で「小刀」を持たされた。図画工作で木工細工があったからだ。砥石の使い方、刃の付け方をよく祖父や父親から教わった。研ぎの技術をうちの子には教えていないが、いつか自分で包丁を研ぐようなときが来るだろうか。
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ナイフを使って鉛筆を削ると、ちびた鉛筆が残り1㎝になってしまってもちゃんと使える。そこで必要になるのが鉛筆補助軸である。 お気に入りはクツワの鉛筆ホルダー。数百円程度と比較的安価ながら、しっかりとしたアルミ軸で耐久性が高く長く使える。色違いで2本持っている。
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ところで、小学校ではあれだけ”鉛筆の使用以外は認めません!”とばかりヒステリックなほどに児童が使う筆記具を徹底管理してきたくせに、中学校以上では、シャープペンシルOK~~!と急に手のひらを返すがごとく、先生は「教育指導要領」に定められたことに従うだけとはいえ、どんな筆記具を使うかまでしっかり要領に定められていて、子どもたちを従わせなくちゃならないなんて変だと思わないのだろうか。
鉛筆を強制するなら刃物の使い方も同時に教えてほしい。他人や自分を傷つける以外に刃物の使い道はたくさんあることを。危ないけどね、自分で使ってみて指をケガしてみて、他人の痛みも分かる。
鉛筆やシャープペンシルは消しゴムで消せるのがいいところなんだけど(昨今はフリクションか)、何をどう間違っていたのか後で見返せるように、消せない筆記具をもっと使った方がいいと思う。きれいなノートを残すより学ぶための工夫の方が大切じゃないだろうか。子どもたちには万年筆やローラーボールをもっともっと使ってほしい。いや、現国の授業中に硯(すずり)と毛筆でノートをとられても困るんですけど。「そこ!授業中は墨をすらない!」