新旧モデルを使い比べ 無印良品のアルミ丸軸万年筆
無印良品のアルミ丸軸万年筆を長く使っている(写真上の右が既に廃版となっている旧型。左が現行)。アルミ丸軸が現行モデルになってから相当の年数になる。よほどファンが多いのか、ロングセラーの現行アルミ丸軸万年筆は、無印良品の万年筆部門を代表する存在である。
形を変えず長く販売されている現行アルミ丸軸万年筆は、ネット上でかなり多くのレビューを見つけることができる。一方で、個人的に20年以上使い続けている旧モデルのレビューをあまり見かけないのは、この商品が販売されていたのは、インターネットがようやく普及し始めた90年代の後半頃までで、2000年代初頭には既に現行品に切り替わっていたからだろう。
キャップの長い旧型はスタイルがよい。インクが収まる軸内は現行品よりやや狭く、新旧共通の専用インクカートリッジ以外にペリカンなどグローバル基準のショートカートリッジが使えるが、ロングカートリッジは軸の底につかえてしまうのが難点である。その点、現行品はショートカートリッジを軸の中に予備としてもう一つ入れておくことはもちろんのこと、ロングカートリッジも支障なく使える。
新旧どちらの万年筆も書き心地はいわゆる鉄ペンで硬いが、ガリガリと引っかかる感じはなく、インクフローたっぷりめのサラサラとした書き心地である。書いていて、どちらも紙を削るような感じがまるでない。インクフローがよいため筆圧をかける必要がなく、例えば、紙から遠い位置で尻軸側を軽く持って、わざと筆圧がかからないように書いても、ちゃんと書ける。速記時にもかすれがなく、素早く長い線を左右に引く際にもインクの途切れがない。これは個体差もあるだろうが、無印良品のアルミ丸軸は、旧型でも現行型でもともになめらかな書き味なので、製品の一貫した特徴と考えてよいだろう。ふとした時に一文字目のインクのつきが悪いような万年筆では、ペン先の使い方に慣れやコツが必要だが、アルミ丸軸ではおろしたてから何も気にする必要がない。長く使っても書き味がよく、使っていてストレスがないのは大きなメリットである。
イリジウムポイントつきのペン先はFニブ(細字)のみのラインナップだが、日本の感覚ではMニブ(中字)に近い。どちらかといえば、旧型の方が現行品よりも細字である。さらに細い線が書きたい場合、ペン先を裏返して使う「裏書き」でもしっかりと筆記できる。
旧型のキャップには底に重りが仕込まれていて、キャップを尻軸側にさして使うと重心がペン先とは反対のキャップ頂点上にあり不安定さを感じる。現行品はキャップ自体が極端に短いため、その点は解消されている。本体軸が十分に長いので、キャップを尻軸にさして使う必要性はないかもしれない。
現行品は特徴的なローレット加工がしっかりとすべり止めの役割を果たしている。旧型はにぎり部分が樹脂製で、ローレット加工はないがすべる感覚はない。新旧ともに本体の表面加工はマットな艶消しでアルミの素材色がいきている。長く使っていても傷が目立たず、大きな経年変化はない。いさぎよい無塗装が形状のシンプルさをさらに際立たせている。
どちらのモデルも質実剛健で故障がないのが良い。価格も比較的安価なので気兼ねなく使える。嵌合(かんごう)式の、クリック感が心地よいキャップは片手で抜くことができ、日常使いで活躍する。
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