軽さに驚いたパイロット万年筆「ライティブ」
限定色の方を店頭で見かけて、むしろ先に発売されている定番色のマットブラックが気になり始めて購入したパイロットの万年筆「ライティブ」(税込2,200円)。思い返せばかれこれ数年前のこと、初めてのコクーン細字が紙を削る感じがして、パイロットのFニブは向いていないな、と思っていたはずなのに、ついつい買ってしまったのはまたしてもFニブ。たまたま店頭にあったマットブラックの最後の一本がFニブで、Mニブは品切れだったのだ。はたして、引き出しにしまいっぱなしになってしまったコクーンの二の舞になるのかどうか...
マットな質感でシンプル、白く美しい紙製の外箱から透明なブリスターパック状の内箱を取り出していざ開封。内箱にはキャップと軸が別々に固定されていて、手に取った人にペン先を見せるパッケージデザインが良い。
万年筆本体を取り出すと、驚くのはその驚異的な軽さだ。ペン先とクリップ以外はオール樹脂製だからこその軽さだが、見た目よりはるかに軽い。普段よく使うアルミ軸のプラチナ万年筆も相当に軽いが、それ以上に軽い。
艶消しオールブラックの軸は質感が高く、ラインナップの他のモデルが全て光沢感ある仕上げになっているのと対照的である。先のプロシオンのラインナップがマット塗装を基本として、唯一ポーセリンホワイト色だけが光沢仕上げになっているのと逆の構成といえる。
書き味は素直によい。職場でよく使うコピー用紙の裏紙メモで、細字らしい細い線がスラスラ引ける。使い始めからインクフローはしっかりとしていて、線にかすれがない。このあたりは既にコクーンやカクノの同じペン先仕様の万年筆が安価で高品質を実現しているように、ストレスなく使える日常使いの万年筆の高い完成度、安定した信頼性の高さを感じる。
黒くマット塗装された金属製のクリップ部分をよく見ると、クリップの付け根にはごく小さく「JAPAN」の刻印文字。一見、艶消し処理されたクリップ部分が樹脂のようにも見えるのは、圧倒的な全体の軽さと、他にあまり見かけないマット塗装のせいだろう。クリップ部分の色が、ごく一般的なシルバーの金属色でなく、あえてマット塗装されているおかげで、このモデルでは全体の統一感がより明確に打ち出されている。
購入から約2カ月、主に職場で使用してきたライティブだが、極めて実用的である。細字ならではの線の細さは、業務的な文書の上でボールペンの文字と比べても違和感なく溶け込んでいる。嵌合式キャップの抜き差しは、ネジ式と比べてはるかに容易である。樹脂製軸の軽さは使用時はもちろん、胸ポケットに刺したとき胸元に負担を感じない。
パイロットのプッシュ式コンバーターCON-70Nは、安心の大容量タイプで長期継続使用が可能。吸入したインクは「色彩雫」の「竹炭」で、純正同士の組み合わせである。最初から顔料インクを入れて詰まらせてしまうのはいやだからと思っての染料系インクだが、ライティブのキャップは、プラチナのスリップシール機構同様にペン先の乾燥を防ぐ工夫がされている。仕事で使うには、やはり顔料インクが適切である。次回カーボンインクの使用で使い心地を試したい。
ライティブを使っていて一つだけ気になっているのは、おそらくマットブラックの軸だけにいえる、サラサラとしたその手触りである。
しっかり握る筆記時には感じにくいが、ふとした時に軸が手の中で滑る感覚があり、何度か不安を感じることがあった。手指のかさつく季節では、もしかするとうっかり落としてしまうケースが増えるかもしれないので気をつけたい。