細長いもの好きな私が選ぶのは、もちろんこっちです。
ワイヤレスヘッドホン・イヤホンが主流の昨今、私はいまだに有線タイプの方が好きだ。有線なら充電の手間がないのはもちろんのこと、Bluetoothの接続状況によって音が不安定になるようなこともないし、何より長いケーブルが本体から伸びていないと、側から見て「明らかに何か聴いてますよ」という格好がつかないーなどと密かに思っている。いや、Bluetoothイヤホンの一つくらいは持っているし、ポッドキャストを聴きながら寝落ちした時にケーブルがしばしばグルグル巻きに首へからまっている自分としては、ワイヤレスの方が安全なのは分かっている。それでも有線タイプがお気に入りなのである。
はっきり言って、私は子どもの頃から細長いものフェチだ。細く長く伸びた自動車のラジオアンテナやパーソナル無線アンテナを、駐車場に誰もいないのを見計らって何度本気でもぎ取ってやろうと考えたか分からない。幸い今まで未遂に終わっているが。車のアンテナの主流がシャークフィンタイプになった今は全くつまらない。あれは大嫌い。私の車はシャークフィンアンテナが標準セットのところ、あえてオプションのロッドアンテナを選んだ。欲を言えば、昔の手で伸ばすアンテナの方が好きだった。
誰でも「スターウォーズ」のライトセーバーや「機動戦士ガンダム」のビームサーベルに憧れるものだが、あれは細長いから好きなのだ。同じ理由で、「X-MEN」ならガンビットの錫杖(しゃくじょう)やサイロックの日本刀が好きだ。変な意味に取らないでほしいが、ムチ(スナップを効かせて振ると音速を超えて激しい爆発音を発する方の)も細長いので好きだ。だから、にしおかすみこが小道具として使っていたムチには何の興味もない。
針がついたアナログタイプの腕時計では、細長い秒針がついている三針式が好きだ。そういった理由で、ひところ大学生に人気だったというダニエルウェリントンは選択肢にない。二針式やスモセコには、ダイヤルの縁まで届く繊細で細長い秒針がないのだから。
初代AppleWatchのずっしりと重い箱を初めて開けた時、それを見て「何の意味があってこんな馬鹿げた長さにしたんだ」と思った充電ケーブルは、しかしやはり細長さの故にお気に入りとなってしまった。
昆虫が好きなのは触角や足が細長いからである。といって鳥の足は苦手なのだが。みんなが大嫌いなゴキブリでも、私はあの触角の長さがたまらない。どうしたって、ポータブルラジオの本体裏から長く伸びるアンテナみたいで格好が良い。人間にあんな触角がついていたら格好いいんじゃないだろうか。...と、ここで気がついた。私の耳から長く伸びるインナーイヤーヘッドホンのケーブルは、つまりあの長い触角みたいなものなのだと。そうかそうか、なるほど。は?何か?