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続・何かに守られている…三男の埋伏歯が奇跡的に見つかった件

こんばんは。鳴海  碧(なるうみ・あお)です。
先日の記事では、「派手に転倒しながらも、奇跡的に顔だけ無傷で済んだ件」について書きました。

本日は、「本来なら見つかるはずのなかった三男の歯の異常が、奇跡的に見つかった件」について書きたいと思います。

よろしければお付き合いください。



自慢ではないが、私は虫歯になりにくい体質だ。
私の遺伝子を引き継いだのか、長男も次男も虫歯になりにくい。だから、普通の人間はそう神経質にならずとも虫歯にならないものだ、と勝手に決めつけていた。
…そう、数年前、三男の歯が根元からポロリと取れてしまうまでは。



幸いなことにポロリと取れたのは乳歯だったが、歯の根っこが歯茎に残ってしまい本人も痛がっているので、急ぎ診察を受けることにした。

しかし、私の居住エリアの歯科医院は完全予約制が多く、飛び込みではなかなか診てもらえない。歯科医院と無縁に生きてきたので、かかりつけ歯科医なんてものも存在しない。
しかも、その日は日曜日。ほとんどの歯科医院は定休日となっている。私と三男は『歯医者難民』となり、訪れる先から断られつつ、診察してもらえる歯科医院を求めて街中をさまよい歩いた。

さまよいながら色々検索していると、割と近いエリアで、日曜もやっている歯科医院を見つけることができた。よし、ここに行ってみることにしよう。

たどり着いてみると、真新しいピカピカの雑居ビル。
エレベーターで上がると、扉が開いた目の前が、いきなり受付だった。そこにはたくさんのお医者さん達とスタッフが集まっており、一斉に私たち親子に視線を向けた。私はそのたくさんの視線にたじろぎながら尋ねた。

「あの…息子の歯が根元で取れてしまったので、診てもらえないでしょうか」

お医者さん達とスタッフは一瞬顔を見合わせ、再び私に視線を向けながら言った。

「すみません。当院は明日から開業なんです。今はその準備中で…」
「え!そうなんですか?……あああ…それは困った…」

何ということだ。やっと見つけることができたのに…

よほど私はガッカリとした顔をしていたのだろう。院長らしき若い男性医師が前に進み出て、「いいですよ。特別サービスで診察しましょう」と言ってくれた。

医師は診察しながら言った。
「この歯については根っこさえ抜けば大丈夫ですが、せっかくの機会なので、レントゲン撮影もしておきませんか?普通の歯医者は、放射線の影響を考えてあまり撮影したがらないものですが、僕は早いうちに検査して確認しといた方がいいと思います。今日なら手が空いてますし」
「はあ、そういうものなんですか。それでは是非お願いします」

ちびっこ三男は撮影室に連れていかれ、しばらくして戻って来た。撮影したレントゲン画像を大型モニターに映し出しながら、医師は声を上げた。

「うわー、これは大変だ。お母さん。息子さんの永久歯が、横向きに生えてます
「は…?横…?どういうことですか?」
「ほら、ここですよ」

当時の画像が手元にないので、ネットで拾った画像をここに添付する。永久歯が横向きに生えているとは、つまりこういう状態だ。

きょうばし矯正歯科クリニック」HPより借用


こんな風に歯茎の内部で横向きに生えるのを『埋伏歯』というらしい。

近年、永久歯が埋まったまま生えてこない人が増えています。

放置していれば、埋まっている歯がすでに生えている歯の根とぶつかって、根っこを溶かしたり、本来あるべき場所に歯がないことで隣の歯が倒れこんできて咬み合せが崩れる可能性があります。

埋まっている歯を引き出すにはマルチブラケット装置などの取り外しのできない装置を支えにする必要性があります。また、歯の位置を精密に検査するため、大学病院にてCTを撮影し、口腔外科医と協力する必要があります。

きょうばし矯正歯科クリニック」HPより


上の引用文では「根っこを溶かしたり…」とさらりと書かれているが、つまり、他の永久歯の根っこが溶けてしまい、乳歯みたいにスポッと抜けてしまう、そして、差し歯にしなくてはならなくなるということなのだ。

歯というものは、他の歯の根っこを溶かしながら成長する。
一般的に歯の根っこはとても長い。普通の永久歯は、乳歯の長い根っこを溶かしながら生えてくる。だから、あるタイミングで乳歯が簡単に抜けるのだ。

…さて、この『埋伏歯』。
外から見えないところで勝手に成長するので、なかなか気付きにくい。
いつまで経っても乳歯が抜けなかったり、乳歯が抜けたのに永久歯が生えて来なかったり、生え変わったはずの歯が抜けてしまったりしたときに、初めて気付くパターンが多いという。

三男は、奇跡的に早期発見できたというわけだ。彼の場合、上の奥歯から3本目が両側とも埋伏歯になり、真横方向に突き進んでいた。



そこからの治療はとても長かった。
診察券を見ると、初診は2018年4月となっている。治療が終わったのは昨年夏だから、約5年もかかったことになる。初診時に小学2年生だった息子は、終了時には中学1年生になっていた。

治療の手順はこうだ。

①都心の大学病院でCT撮影し、埋伏歯であることを正しく確認する。

②永久歯は、空いている隙間に向かって伸びるので、該当箇所の乳歯を隣も合わせて2本ずつ抜き、ブラケットを入れて十分な隙間を作る。その隙間をめがけて、今は横向きに生えている歯がジワジワと向きを変えてくれるのをじっくりと待つ。もちろん、こちらの希望通りに下向きになってくれない場合もある。その場合は③以降の治療がちょっとややこしくなるらしい。

③幸運にも、三男の埋伏歯は下向きに方向転換してくれた。埋伏歯が歯茎から顔を出したところでブラケットを取り付け、更に正しい方向へと引っ張ってあげる。

④三男の場合、ここで厄介なことが発覚した。埋伏歯が2本とも90°ひねった状態で生えてきているのだ。ブラケットを付け変えながら、歯が正しい向きに回転するよう誘導する。

⑤ちからずくで矯正してきたので、歯列に隙間や凸凹ができている。咬み合わせが良くなるように全体を矯正して、出来上がり。

…とまあ、手間ヒマとお金をかけて矯正し、無事に治療を終えることができた。埋伏歯の矯正治療は健康保険の対象にならず、行政の子ども向け医療費補助の対象にもならないようだ。つまり全額自己負担。ただし、子どもの矯正治療は医療費控除の対象なので、確定申告すれば一部が戻ってくる。

それにしても…
三男は、たまたま良いタイミングで虫歯になり、たまたま行った歯科医院で、たまたまレントゲン撮影を勧められ、たまたま埋伏歯を発見できた

もしも私が三男の虫歯に細心の注意を払い、歯医者知らずの生活を続けていたら、埋伏歯はわれわれの知らぬうちに横向きに成長し、他の永久歯を根っこから溶かしていただろう。

私も三男もズボラだったために、彼は虫歯になり、埋伏歯を発見できた。怪我の功名とは、まさにこのこと。

世の中ではこんなことがあるので、小学生のお子さんがいる方には、是非、頭の片隅でちょこっと覚えておいていただきたい


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