【偏愛オススメ】夏の終わりに観たい読みたいハードボイルド3選
こんにちは。鳴海 碧(なるうみ・あお)です。
本日は、
夏の終わりに観たい読みたいハードボイルドを
小説・漫画・映画の中から1点ずつご紹介します。
鳴海がしみじみと胸に抱きしめ続けている作品です。
この気持ちを誰かと分かち合いたい…!
皆様も是非ご覧ください。
ところで、
何を持って『ハードボイルド』とするか?
ですが、下記のとおり定義したいと思います。
●暴力的・反道徳的な内容を、客観的に描写した作風
●感情に流されず、精神的・肉体的に強靭な人格
ではでは、行ってみましょう!
小説 『星夜航行』
飯嶋和一/著
小説新潮 2009~2014
こちらはですね…
下巻の帯に『その決断と行いに魂が震える!人が一生に一度、出会えるかどうかの傑作』とあるのですが、その言葉を裏切らない素晴らしい作品だと思います。
「飯嶋和一にハズレなし」と言われる作家さんですが、その中でも、本作に対して注ぎ込んだ熱量は凄まじいものがあります。資料を調べに調べあげ、これでもか!と緻密に描写していく、その筆力に圧倒されます。
歴史小説・時代小説といえば、司馬遼太郎先生、井上靖先生、池波正太郎先生など大御所を偏愛してきた鳴海ですが、この小説を読んで「これまで読んできたものは何だったのかな…ただのペラいエンタメだったな…人生を無駄遣いしたかも…」と思ってしまいました。
(上記の先生方のファンの皆様、本当にごめんなさい!今でも好きです。どれもとっても面白いです。本作とは面白さのベクトルが違うだけ…)
主人公の沢瀬甚五郎は過酷な運命に翻弄されながらも、決して屈せず、自分が正しいと信じる道を突き進んでいきます。それは、日本の壮絶な暗黒史である朝鮮出兵の最中にあっても。
この沢瀬甚五郎が、とにかく、かっこいい。
いや「かっこいい」なんてチャラい表現はしたくない。「男が惚れる男」であることは間違いない。
もしも私が沢瀬甚五郎みたいな男性と出会ってしまったら……ちょっとヤバいですね。人生を踏み外すと思います。(あ、本作は、恋愛要素はかなり薄めですので、悪しからず…)
作者がタイトルに込めた想い
「星は雨や曇りの日には見えないが、一定の軌道で動く。人生には変転があるが、どんな立場になっても心の指針がぶれなければ、きっと良い人生を過ごせる」
ラストは、哀愁漂いながらも爽やかで希望に満ちています。私も主人公に「幸くあれ」の言葉を贈りたい!
漫画 『雪人』
大沢在昌/原作 もんでんあきこ/作画
ビッグコミック スペリオール 2011~2013
こちらはですね…
私がフォローするnoterさんにも既にオススメした作品ですが、文句なしに面白いです。原作が『新宿鮫』の大沢在昌先生ですからね、面白くない訳がありません。
ここで鳴海は、原作の『北の狩人』ではなく漫画『雪人』を是非オススメしたい。もんでんあきこ先生の画力が半端ないのです。
もんでんあきこ先生は、もとは少女漫画家ですが、純愛もエロも格闘も極道も描ける稀有なお方で、鳴海は大大大ファン。特に、迫力ある格闘シーンは必見です!
とにかく読んでいただかないことには始まらない。
現在、めちゃコミックで9話まで無料イッキ読みが可能らしいです。是非パラパラ~とめくってみてください!
映画 『インファナル・アフェア』
もとい 『ラスト、コーション』
『インファナル・アフェア』
アンディ・ラウ、トニー・レオン/主演 2003
こちらはですね…
もう名作すぎて、今さら私が語ることは何もないですね。野暮な解説はやめておきましょう。
その代わり、と言ってはなんですが、トニー・レオン主演の別作品をご紹介したいと思います↓↓↓
『ラスト、コーション』
トニー・レオン、タン・ウェイ/主演 2007
こちらはですね…
ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞と金オゼッラ賞を受賞していますので、ご覧になった方も多いと思います。
「恋愛映画では?」とのご意見もありそうですが、恋愛の枠には収まりきらないハードボイルドだと個人的には思っています。
タン・ウェイ演じる女スパイが、トニー・レオン演じる特務機関員を色仕掛けで籠絡していくのですが、二人の性描写があまりに激しく生々しいので、好みが分かれる作品だと思います。
私も正直、最初は「これはちょっとつらい…」と思いながら観ていました。アダルトビデオ風のお色気ムンムンな演出はほぼ皆無で、ひたすら他人の情事を見せつけられる感じです。しかも、二人が互いに愛情を持たないまま情事を重ねていくので、観ている方も苦しいのです。
トニー・レオンは、この撮影中、精神的にかなり追い詰められたとのこと。
映画『娼年』の松坂桃李さんも、ご飯が食べられなくなって体重がどんどん落ちていった、と言っていましたが、そりゃそうだろうと思います。
それでも鳴海が本作をオススメするのは…
(注意:ここから若干のネタバレを含みます!)
ただの無慈悲な鬼畜と思われた特務機関員が、実は、深い孤独と、自分自身への絶望と、暗殺される恐怖を抱えながら生きている。そのことが、二人の情事の垣間にじわじわと炙り出されていきます。
そして、当初は女スパイのことを性欲の捌け口としか思っていなかったのに、次第に心から愛するようになり、やがて、救いを求めるようになっていきます。
女スパイもまた、自分に対する特務機関員の愛情を敏感に感じ取り、スパイとしての任務とのはざまで大きく揺れ動くようになります。
ストーリーとしてはありきたりですが、二人の感情や距離感がリアリティを持って繊細に描写されていて、こちらも強く心を揺さぶられるのです。
そしてクライマックス。
歴史の大きなうねりに、予定調和的に追い詰められ…
自分で決断を下し、毅然と前を見るタン・ウェイ。
大きな喪失感にうちひしがれるトニー・レオン。
「…そうだよね…そうなるよね…ああ、嘘だと思いたい…」と、なんともやり切れない思いになりました。
もう一度見ろ、と言われたら、正直つらい。
しかし、心に根付いて離れない映画です。
以上、オススメ3選でした。
やっぱり長文になってしまいましたね……(;^_^A
最後までご覧いただきありがとうございました!