夫婦同姓と夫婦別姓 中国生活(記事63)
先日の「数字と五音」でも書きましたが、中国での生活に慣れると、「日本では当然なこと」に違和感を覚えることがあります。
例えば夫婦の苗字もその一例です。
日本では、夫婦は同姓なので、山田くんのお父さんもお母さんも山田さんです。
でも、中国では結婚しても姓が変わらないので、李くんのお父さんは李さんでも、お母さんは王さんだったり陳さんだったりします。
だからこういう会話が成立します。
「李君のお母さんはなんていう苗字なの?」
「私の母は王です。」
中国に来たばかりの頃は、友人の父親と母親の姓が異なるというのは不思議というか不便に思いました。
学校の先生なんかも、生徒と母親の苗字が違うというのは大変だろうなあ、と思ったものです。
例えば先生が生徒の母親と会った時、
先生「こんにちは。王さん。」
王さん「あ、こんにちは、先生。」
先生「王さんの息子さんの李傑くん、とっても優秀ですよ。」
王さん「いえいえ、うちの李傑は家では何もやらなくて困っているんですよ。」
これを日本の姓に置き換えると、もっとおかしな感じがすると思います。
先生「こんにちは。渡辺さん。」
渡辺さん「あ、こんにちは、先生。」
先生「渡辺さんの息子さんの鈴木一郎くん、とっても優秀ですよ。」
渡辺さん「いえいえ、うちの鈴木一郎は家では何もやらなくて困っているんですよ。」
ところが中国で生活して30年近く経つと、夫婦別姓が当然なことになるので、日本の夫婦同姓がなんとなく不思議な感じに思えてきます。
例えば中国では
「曹くん、お母さんの苗字は何?」
「うちは父も母も曹です。」
「え?めずらしいねえ。」
となります。
昔々、中国には「同姓不婚」という決まりがありました。今では同姓の二人が結婚しても法律上は全く問題ないので、夫婦同姓も増えていますが、それでも夫婦別姓の方が圧倒的に多いと思います。
どうもこの感覚に慣れてしまうと、例えば鈴木一郎くんの両親に
「こんにちは、私は鈴木一郎の父、太郎です。」
「一郎の母、静子です。」
と自己紹介された時、「お母さんの苗字は何ですか?」とつい聞いてしまいたくなると思います。
ちなみに、中国の子供は父親の姓を継ぐのが一般的です。でも、我が家の場合は私の姓ががっつり日本人なので、子供たちは妻の姓を名乗っています。日本人でも林さんとか森さんとか秦さんとかだったら、そのまま父親の姓を名乗っても問題ないんですけどねえ。
(中国の子供に日本の姓をつけることもできますし、じっさい日本人の姓をもつ子もいますが、学校に入ってからいじめに遭う可能性があるので、我が家は避けました)
まとまりがない内容になってしまいましたが、要約すると、日本で育って夫婦同姓が当然だった私でも、今は夫婦別姓が当然になっている、という話しです。
日本では「夫婦別姓」に関する議論が長く続けられている割にはいつも先延ばしにしているように思えます。強制ではなく選択制の夫婦別姓なら、とりあえずやってみればいいのに、と思うのですけど、その一歩が難しいんですかねえ。
今回の画像は1/18のアメリカン・フィギュアです。