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死について

先週父が死んだ
死なないと思っていた父が死んだ
いなくなるなんて
電話すればまた出てきそうなのに

父の記憶は薄れていくのだろうか

死というものに対する恐怖が薄れた
死んだ後の父は寝ているかのようで
またイビキをかき出すのではないかと
思うほどだった

火葬場で火葬され、骨になった父を見た時も
父の骨だとは分かったし、年齢の割にはしっかりしている骨を見て、流石だと思ったが、
この世から消えてなくなった実感がない

抗がん剤治療が限界に達し、痛みと熱のコントロールに目標を切り替えた時から、父の死がすぐそこにあることはわかっていた

自宅療養を始め、運動もせず食事もろくに取らない父はすぐに痩せていき、動けなくなり、痛みを抑えるために投与された薬でどんどん話ができなくなっていった。そして最後の方は食事も水もほぼ摂らないのに、便だけはとてつもない量を出した

食事を摂らず、寝たきりの父の足は、骨と皮だけだったのに、便はたくさん出した

亡くなる2日前
数日間、何を言っているのか正直よくわからない状況が続いた父が、はっきりとした声で、ありがとうを2回言った

そしてそこから父は呼びかけにも反応せず、痛みも訴えず、2日間寝続けて、

少しずつ呼吸を弱めていって、息を引き取った

厳格だった父
しかし見捨てない父
生きることに貪欲だった父
しかし突然、家に帰りたいとばかり言い続けるようになった父
家に帰り食が細くなり、どんどん弱っていく自分と戦っていた父

もう会えないという実感があまりない
また会えそうな気がする
母が、また旅行に行こうね、と父の遺影に向かって言ってるのを見て、いいやん、行ったらいいやん、行ける行けるよと、思ってしまう

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