魔球:ケラウノス

おまえら、もし地球に野球星人が攻めてきて、向こうの大将と地球代表が野球の試合で対決し、負けたら植民地にされるという事態になったら、地球代表は絶対大谷でないとイヤだろ?
山本でもいいのか?山本に地球の命運を託せるのか?
大谷をけなしてるやつは地球規模で考えるんだ

旧世紀全球通信網のアーカイヴ

 そのチーム--エンジェルスに天使は一人だって残っていなかった。全員が死球を喰らって病院送りになったからだ。代わりに、別の時代の異邦人がボールを追っている。例えばたった今、盗塁を狙って走った山本の踵に野球星人の手が触れた。山本も死んだ。人類史が野球星人に侵される。地球が野球になっていく。

 野球に最適化されたその種族--野球星人は侵略先の星々に野球を挑み、戦利品として惑星を征服してきた。地球にやってくる以前にも、きっとどこかで七本腕がバットを振るい、あるいはベースを踏みにじる。死球だって撃ち込まれた。こんなふうに。
【脇腹を貫かれたキリスト(第十打席)*】
【バットを振り抜くロンギヌス(第十五打席)**】
 これらの画像は球場に引用された人類史の、ほんの一部分に過ぎない。
 それでも人類は諦めなかった。制約と誓約の匣たるその球場に、人類史に選手登録された全てのプレイヤーを送り込み続けたのだ。
 なぜって?
 いつか必ず、その選手が現れることを知っていたから。

 また一人、投手が死ぬ。打席に立つ野球星人の一人が、ボールを投じた当人の頭に打球を撃ち込んだからだ。「いよいよだ」クリストファー・ノーラン監督が呟いた。救援投手が、ブルペンから来たる。盟友、山本アキレスの死地へ。

 リリーフカーは四頭立ての馬車だった。その投手が降りてくる。
 背番号17番、大谷ゼウスがマウンドに立つ。

【続く】

いいなと思ったら応援しよう!