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「授業、へたですね」
質の高い授業のための【指導スキル】50
私は若い頃、先輩先生からストレートに「授業がへたですね」と言われていました…。
そう言われても、なにがどう下手なのか、全くわかりませんでした。
「技は盗むものだ」と、その職人気質の先生は言っていました。
下手な理由を聞けば丁寧に教えてくれたのかもしれませんが、当時の私は素直に聞けませんでした。
しかし私は、その先生から技を盗もうと、一挙一動を観察しました。
その言葉、その指導の意味を一所懸命考えたものです。
しかし今は、若い先生にそんな愛に溢れた言葉を言おうものなら、「パワハラ」と言われかねません。
日々お互いに、「授業でこうするともっとよくなるよ」「子どもがわかるようになるよ」と、気軽に伝える時間も持てないのではないでしょうか。
教育で本当に大切なことが風雨にさらされ、消えかかっている…と憂えている先生も多いのではないでしょうか?
そこで、授業で大切にしていること、今さら聞けない【指導スキル】を、これまで出会った優しい「授業の達人」たちに挙げてもらいました。
達人の生の声をヒントにしてもらえればと思います。
◾️環境づくり・授業の態勢
1・ 他のものに気がとられないようにするための教室環境の整備。
2・ ブロークンウィンドウ(割れ窓)理論は、障害の有無に関わらない。
乱れた環境は、感情の乱れにつながる。例えば、壁や廊下の掲示物が曲がったり、はがれたりしているのは、無意識に脳にインプットされる。子どもの主体性を大切にすることと勘違いし、掲示物を曲がったままにしておくのは、曲がった状態を基準にするようなもの。
3・ チームティーチングでの教師のポジショニングを意識する。
子どもにとっては、どの先生もメインティーチャーである。
4・ 活動(課題)に集中できるようにするため、机上には必要なものだけのせる。
5・ 子ども全員が、教材教具、黒板を見える机・椅子の配置に気を配る。
6・ 場面ごとに、子どもがどこを見ればよいかわかるような配置を工夫する。
7・ 話に集中しにくい生徒は、教室の中央前の方、人が気になる場合は、はじの座席などにする。
8・ 取捨選択できる視覚情報の量を調整する。テレビの情報番組が参考になる。
9・活動のはじめとおわりを明確に示す。事前にトイレに行っておくなど。
10・ どんなことばで揉拶をすると、次の活動をイメージできるか、頭をはたらかせられるかを常に工夫する。
11・子どもが自分で準備・片付けしやすい道具箱にする。
◾️動機づけ
12・生徒が学びたいと願っているところをキャッチし返していく。
13・生徒が「学ぶ楽しさ」を実感できる授業内容、学習活動を用意する。
14・サプライズ(鷺き)のある要素を提示するやりたい、知りたい、作りたい、触ってみたい気持ちが生まれることが授業のどこかにかくされていることで、自然と学んでしまう。
15・自分が活動(学習)することで得られる成果(場合によっては報酬)を予測できるように提示して、自己目標をもたせる。
16・「わかった」「できた」の喜びを、次のモチベーションにつなげる。
17・1時間の中で、一単元の中で、日々の中で、自ら実感できる力を獲得させる。それがまた、次の「やってみよう」「やりたい」という気持ちにつながる。次の階段に上がりたい。
18・「靴下のはき方のプログラム」=「ゴールから一歩手前」をいつも念頭に置く。
分析的プログラムで「これの次はこれ」はなく、児童生徒の達成感、モチベーションから逆算する。毎回「できた!」で終わる学習活動を用意する。
19・「やらされた」「先生が○と言った」ではなく、できた、わかったを子ども自身がわかる工夫。
20・授業そのものは教師の主導の場であるが、やらされたではなく、自分でできた、と感じさせる工夫。
21・子どもの知っている現実からスタートする..
子どもが体験していることからスタートして、課題の内容に入っていく。そのためには、日常の学校生活などでの体験の共有が必要。
◾️子どもが主役
授業を効果的に行うためには、子どもの気持ちを支える「メンタルサポート」が大切です。
家庭環境をはじめ、子どもを取り巻く環境との相互作用により情緒の安定をはかることで安心感が生まれます。
学力の落ち込みや粗暴な行動の原因として、子どもを取り巻く環境に着目し、「子どものせいにしない」支援を考えましょう。
22・一人ひとりの学習活動における支援の明確化…その活動で、一人ひとりどこにポイントをおいて支援すればよいか、をおさえておくことで、生徒は敏感に感じ取り、安心して活動に取り組めることで、課題が達成されやすくなる。
23・意欲をもって取り組んだ後に身につけたり、成就感をもてたりしたことは、絶対に忘れない。
24・一人ひとりに活動場面があり、適材適所に得意な活動を行うことができるように設定する。
25・子どもの主体的活動=子どもが自ら気づき、確認できる学習活動を用意する。できればよい、作品が完成すればよい、ワークシートを埋めればよい…ではない。
26・黒板・視覚支援は、「できない」ときに教師と一緒にわからない点を「見える化」でき、本人の頭の中の整理、確認の手段となる。
27・自らやりたくなる環境(教材の工夫、提示の仕方、モチベーションのもたせ方など) は、子どもはいきいきとした表情になる。
28・フィードバック&フィードフォワード。
できたことを子ども個人の中で完結するのではなく、まわりの友達や先生の言葉、教材などの環境を個人の中にもどしながら、高め、広げていくようにする(フィードバック)。子どもの表出を丁寧にとりあげ、意味づけをして、次に繋げるようにする(フィードフォワード)。
29・準備から片づけまで、子どもが関われる形にする。
子どもが準備から関わることで、頭の中に一連の流れがインプットされる。次の活動からその記憶を再生・再認して、自主的に取り組め、支援の量を減らしていくことができる。
30・準備・片付けで教師と一緒に活動することで、作っている、やりたいという気持ちの喚起・共感、待ち時間の削減ができる
31・集団から学ぶ→個で学ぶ→個から集団へ学びを返す の順番で育つ。
個の中だけで学ぶことはできない。
32・集団を育てると、個も育つ。
33・今日大人といっしょにできることは、明日ひとりでできる(ヴィゴツキー)
◾️認める・任せる・NO PROBLEM
34・メンタル面のサポートによる支援の目標は「自信」。
自信をもつと、生活も学習もコミュニケーションも、うまくいく。
◾️意欲
35・子どもが出した答えがまちがっていた時、まず肯定的に認めてあげられる部分をフィードバックする。同時にそのエラーの原因を分析して、次の手を打。つ
36・否定的なことばをダイレクトに使わない。
「だめ」「ちがう」など、使うときはなぜ、どこがどのように「だめ」なのか、「ちがう」のはなにかをきちんと伝え、どうすればよいかまでを学ばせる。
37・ちょっとでも前よりできるようになったら、できるようになったプロセスを言葉にしてほめ、次への意款を持たせる。
気をつけることは、「結果」をほめない。結果をほめるのは、「外発的動機づけ」であり、ほめられるためにやる、ほめられなければやらない、なぜほめられたのかわからないけどうれしいからやる…となる。
38・活動は公平にし、やりたい気持ちを伸ばす。できる生徒は、見本としてやってもらう
39・必然性のある流れを作る…目的を明確に示す、自然な思考の流れ、合理的な活動・動作の流れ
40・子どちもだち一人ひとりが活躍できる場を設定し、自信につなげること。
41・ほめ続けると意欲は落ちる。
不安になりながらチャレンジしたことを「NO PROBLEM」=「それでいいんだよ」と背中を押してあげる言葉でOK。
42・あこがれをもつ=自己目標をもたせると育つ。
43・「任せる」こと=先生の期待が子どもを育てる。
44・小さな努力で大きな効果(見栄え)作品を見栄えよく展示し(額に入れる等)自己効力感を高め、自信と次の意款につなげる。
◾️子ども同士のやりとり
45・他の友だちから学べるように、グループづくりの組み合わせ方を、子ども任せにせず、お互いに高めあったり、助け合えるグループにする。
46・やりとり: 配るものがあるときは、子どちもたちに配ってもらう。自動生徒同士での「どうぞ」「`ありがとう」等 、ことばのやりとりを大切にする
47・集団の中で仲間を意識できるような活動を意図的に設定する。
48・グループでおこなう授業では生徒同士のやりとりを大切にしたい。
49・「子どもと教師」から「子どもと子ども」同士でのやりとりへ広がるように授業を組み立てる。
◾️保護者へのフィードバック
50・保護者へのフィードバックをポイントを押さえておこなう。
保護者へはエピソードだけではなく、その意味づけ、今後の見通し、具体的な手立てのアイデアをセットで伝えることで、保護者が安心でき、子どもへの指導が効果的にすすめられる。
以上、私たち先輩先生たちが日々大切にしている50の指導スキルです。
どのヒントも、「あたりまえ」のことだと思われるかもしれません。
それはつまり、障害の程度や言語獲得の有無に関わらず、人間のもつ認知を基にした普遍的な内容ということです。
特に特別支援教育では、知的障害・発達障害があるからこそ、丁寧に発達を促す指導が大切です。
これらの【指導スキル】を、教師が楽しんでいると、子どもも学びを楽しむことができます。
教師のみなさんも、効果的な【指導スキル】をもっていることと思います。
ぜひコメントで教えてください。