地獄
現世で悪業を重ねた者が、死後その報いによって落ちて、責め苦を受けるという所
コトバンク世間ではいよいよ一般人の「宇宙旅行」が現実味を帯びてきていますが、いまだ自由に往来できないのがこの世とあの世の境界線でしょう。戻ってこれる保証がないし、ましてや行先が地獄となると、二の足を踏むのもやむをえません。しかし、なんと金を払えば気軽に行って帰ってこれる「地獄バスツアー」があるっていうじゃないですか。
地獄の沙汰もカネ次第。
地獄経済もインバウンド需要で活況を呈しているようです。
2023.11.09 大分空港に到着~😁 この地へ足を踏み入れるのは初めてであります。11月だというのに暖かで、Tシャツ1枚でも過ごせそうな陽気です。
空港から高速バスで別府市内へ。平日の木曜日だというのに、わりと混んでいる。
バスセンターへやってきました。入口には堂々と地獄めぐりのポスターが掲げられている。
つのだじろうタッチのガイドさんも。
地獄とタイアップしている観光バス会社が、7か所の地獄めぐりツアーを開催しています。地獄初体験の身としては、効率よく回るためにお手軽なツアーを利用しようという魂胆です。
バスも鬼仕様👹
Welcome to HELL という潔さ。地獄生活も意外と悪くないかもという気がしてきた。
シートベルトは締めましょう。でも、これから地獄へ行くんですよね。いや、いいんですけど。
道中はガイドさんがいろいろ説明してくれる。7つの海ならぬ、7つの地獄をまたにかけ、一行は地獄めぐりの旅に出発です。
①海地獄
お湯に含まれる硫酸鉄が光に反応して青く見えるのだとか。水温は100℃近くもあり、表面からひっきりなしに水蒸気が上がっています。
温泉卵もある😋
音量注意!
結構な規模の温泉です。入れませんけどね。
地獄名物の極楽饅頭という、完全に狙っているネーミングなんだが、不覚にもクスッと笑ってしまったのが悔しい。
②鬼石坊主地獄
吹きあがる蒸気が鬼の高いびきとして紹介されている。青鬼のイラストが載っているけれど、蒸気の温度は100℃だからね。一瞬で赤鬼になるレベルです。
そしてこれが鬼石坊主地獄。熱泥の底からガスが湧き出ており「ボコッ、ボコッ」と坊主頭のように見えることからこう呼んだそうな。でも、なんで「鬼石」なの? たんに「坊主地獄」でいいんじゃないの? そう思ったんだが、のちほど地獄の裏事情を知ることになる🥴
地獄にも、ひとにぎりの希望があるということでしょう。
鬼石坊主地獄を抜け、一行は次の地獄へと向かう。途中で目にした「山地獄」は、なんだか賑やかで楽しそう。地獄とはいったい……😅。でも、あれ? 通りすぎちゃうの? 7つの地獄ルートに含まれていないので、このパビリオン(じごく)はスルー。
青鬼フラッグに導かれ、ぞろぞろとついていきます。おとなの事情的な、実に人間臭いものをひしひしと感じるのですが、ほんとうにここは地獄なんでしょうか。
あ、でも地獄で間違いないみたい。
③かまど地獄
この赤鬼はこんな見た目してますが良い鬼らしく、たぶん下の緑鬼や龍は悪役なんだろうね。
ここもきれいなブルーと白い鉱物でできている。地獄というよりも、極楽に近くないか?
うわ~、ちがう! やっぱり地獄だわ。蜘蛛の糸はやく!
かまど地獄を早々に退散した一行は、なにやらにぎやかなポップアートの世界へ。
④鬼山地獄
露骨に注意喚起されています。
おへそがチャーミングです。しかし、鬼ってメスはいないのかな。
そういうことじゃないだろ、と
鬼山地獄では温泉熱を利用して、本来は亜熱帯に生息するワニを飼育している。地獄というか、単純に危険地帯だな。こんな警告標識、見たことないです。
ちゃんと許可も取っている。でもさ、本当にいるの? 「おひるねちゅうです🐊」とか「本日のショーは終了しました」とかのパターンも。
普通にいたわ……。押すなよ、押すなよ、絶対に押すなよ!😨
敷地内にはみんなが仲良く共生する世界が描かれている。
このお猿さん、やられるね。
⑤白池地獄
いよいよ地獄めぐりも終盤。自然の厳しさを学んだ我々は、白池地獄へ。このタオル、「○○へ行ってきました」的なお土産クッキーに近いセンスを感じます。右端に写りこんでいる閻魔大王のけがれを知らない目つきも見逃せません。
いちおう白っぽい池もあるんだけれど――
もはや地獄はあまり関係ありません。
メインは熱帯魚のピラルク! ここ、ほぼほぼ水族館です。地獄どこいった?
⑥竜巻地獄
ここは間欠泉です。血の池地獄の隣にあるんだけれど、もうすぐ吹き出すタイミングだということで、先にこちらへ来ました。これがBeforeの図。そして――
噴出! ゴゴゴォーッといきおいよく吹き出すお湯の温度は100℃を超えており、湯けむりがあたりを包みます。
別府地獄組合という文字が見える。そう、地獄には組合があるんです。現在、組合に加入している地獄が7つあり、それが今回のルートというわけ。途中の山地獄は、かつては組合員だったけれど、いまは脱退したんだとか。地獄事情も複雑なようです。
なので、これも正確には「毎日が地獄組合員です」が正しい。
節分のとき大活躍😝
⑦血の池地獄
いよいよ最後の地獄。このマークもコワイねぇ😱
鬼があぶないっていってんだから、相当だよ。
血の池地獄は酸化鉄により赤く染まった温泉です。
もうなんでもあり。
このキャラクターといい、丸っこい字体といい、昭和のファンシーグッズを彷彿とさせます。
おどろおどろしく地獄案内(Hell guide)と書いてあるのがイイ😁 ところどころ怪しい表現も。
地獄にもあたらしい風が吹き始めたようです。これにて、地獄めぐりツアーは終了。バスセンターへ戻り、みんな解散して終わり……かと思われた。
ところが・・・
2023.11.11 大分視察の3日目、観光タクシーのおじちゃんに名所案内をお願いしていたのだが、初日に地獄めぐりバスツアーへ参加したことを告げたところ、見せたいものがあるという。連れて行ってもらったのは「坊主地獄」。そう、「鬼石坊主地獄」ではなく、ただの「坊主地獄」です。ツアーのバスで通りかかったのを覚えていたんだが、そのときバスはスルーしていたので「あれ?」と思ったんだよね。まさか2日後に再訪することになるとは。
ここは天然記念物とのこと。あちらの地獄とは一線を画す雰囲気。お客さんもほとんどいない。
いまの天皇陛下が皇太子時代に見学に訪れたこともある由緒正しい地獄。当然ながら組合にも参加せず。ここは観光地じゃなくてガチなんです。だからお土産コーナーもない。
タクシー運ちゃんの「坊主地獄ってのは、ここのことだよ」のあとで目にした光景は、鬼石のやつと全然ちがう坊主地獄でした。
音量注意!
ここでいう三大地獄とは、海地獄、血の池地獄、そしてこの坊主地獄。別府市内には数々の「地獄」があり、個人所有が多く、観光資源化するために組合ができているとのこと。実際、商業的にもかなり成功しているらしい。それが悪いとは思わないけれど、この空間は、明らかに異質というか(本来はこれが正道なんだろうが)、観光客の姿もなく、静謐で、自然の音だけが響いていた。
高温と温泉成分とで変形・変質するコイン。蒸気がつねに勢いよく噴出していて、このボイラーどうなってんだ😄
音量注意!
約500年前、延内寺という寺の足元が爆発し、ここはその噴火口。いまでも底からガスが噴出することがあるという。坊主地獄の呼称は熱泥から湧き上がる坊主頭のような噴出物に由来するというけれど、過去のいきさつを踏まえるとなんだか深いものがあるね。
けれど、その噴出量も近ごろ減少が顕著になり、庭園内の「地獄」のいくつかはここ数年で活動を止めたらしい。かたや、新しく生まれた地獄もあり、この足元ではいまだマグマの活動が静かに続いている。再燃するのか、このまま終焉を迎えるのか、それはだれにもわからないけれど。
それでも、とにかくここは特別な場所だった。
俗世から隔絶され、鳥の声と大地の息づかいだけが響く庭園。
鬼はいないけれど(笑)、地獄の凄みを感じられる場所でした。