経験のあるコーチは選手のどんなところを褒めているんですか?(スポーツ教育学のおはなし)
こんにちは!ジョゼ佐藤です。
今日は、サッカー指導者をしている教え子からいただいた質問の話をしようと思います。
よろしくお願いいたします。
教え子からは、
とのことでした。
思い返せば、私もプロコーチを始めたばかりの頃は、この教え子と同じような気持ちになりました。「子どもは褒めて伸ばせ」というのはわかるから、とりあえず一生懸命選手のことを褒めて評価をしてはみました。
選手が得点をすれば「ナイスゴール!」、その得点をした選手にナイスパスをした選手には「ナイスボール」などと選手が得点をするたびに大きな声を出して一生懸命褒めていました。
しかし、選手は私から褒められて、嬉しそうにしていることはわかりましたが、褒めたからと言ってその選手の『どこがどう良くなったのか』はわかりませんでした。
私もそんな、『褒めはしたけど、その選手にどう効果があったのかはわからない』という状態に悩み苦しんだ時期がありました。
その頃を思い出しながら、教え子の悩みに回答をしてみました。
以下、教え子への回答内容が❶❷❸になります。
私が指導者を始めたばかりの頃は、
❶得点をした選手を「ナイスゴール!」などと言って褒めた
❷得点をした選手に「ナイスパス」をした選手を「ナイスボール!」などと言って褒めた
❸試合に勝った時に「よくやった!」「おめでとう!」などと言って褒めた
といった、せいぜい3種類(3パターン)程度の褒め方しかできませんでした。
しかしこれでは、結局のところ、私は選手の成し遂げた『結果』(もしくは『成果』)についてしか褒めていませんよね?
この『結果』だけを褒めるということは、完全悪(→だからダメ)というほどのことではありませんが、結果だけを褒められた選手は『結果しか』追い求められなくなってしまいますので、『結果ばかりにこだわる』(=努力することを大事にしない)という危険性をはらんでいます。
また、『結果』を褒めるのは専門家でなくてもできることなので、わざわざ指導者が伝える必要は無いように思います。
指導者が初心者であるならば、このような『結果』しか褒められないのは仕方の無いことだと思いますが、初心者からワンランクアップした指導者であれば、まずは、
“選手の結果ではなく、『過程』や『原因』、『努力の内容』を褒めるようにしましょう”
ということに気をつけてみるといいんじゃないかと思います。
では、『結果』以外にどんなところが褒められるかと言いますと、指導歴のあるコーチは、例えばですが、
例)試合で得点をした選手
◎今のはよく空いたスペースを見てたね!
◎今のゴールではよく足を出してシュートを打てたね!
◎動き出すタイミングが早くてよく気がついたね!
などと選手の『運動行動』(=選手の動作や動き方など)を観察する際の『認知構造』(=動き方の種類)が多岐にわたり、指導歴の浅い指導者よりも複雑なところを見ています。
簡単に申し上げると、
“選手の『褒めポイント』がたくさんある。または、選手の細かいところを『褒めポイント』として見ている”
ということです。そのため、このような褒められ方をした選手は、
⓵自分のどんな考え方がよかったのか?
⓶自分のどんな判断の仕方がよかったのか?
⓷自分がどんな努力をしたからよかったのか?
といった、その選手の『得点までのプロセス』や『プレーが上手くいった原因』、『努力をしたその努力の内容』の確認(とふりかえり)ができるので、「自分のどんなところができるようになったのか?」といったことや、「自分のどんなところが良かったのか?」といったことを客観視できるようにもなり、自分の能力にさらに自信がつくことになります。
選手たちのせっかくの成長の機会に、選手たちそれぞれの良さの『気づき』を確実に得るためにも、選手の動き(運動行動)から⓵⓶⓷のような認知構造がどれくらい良かったのか、伝えてみてはいかがでしょうか。
“指導者が選手の細かい良いところを褒めれば褒めるほど、選手は自分の『良いところ』をより細かく複雑に見られるようにもなります”
(選手の細かいところを褒めるメリット)
そのためには、指導の内容や指導方法に関する知識、さらには選手に対する知識をより増やしていく努力を積み重ねてみましょう。
※そのための実践方法はたくさんあると考えられますので、今回のこの記事で具体的に述べることは控えようと思います。大変恐縮に思いますが、ご了承のほどよろしくお願いいたします。
また、これは今回の回答の補足になりますが、指導歴のある指導者は、指導歴の浅い指導者よりも褒める内容が❶や❷の内容になることが多いのですが、同時に、
“選手がよりプレーの成功率を高めるために、褒めたあとに【改善案のアイデア】を伝える声かけも一緒に行う”
ということがあります。
これは、例えばですが、
例)選手が良いプレーをしました
選手は自分が良いプレーをしたあとに褒められると、自分のプレーに自信がついて前向きになりますので、他の方の意見や助言を受け入れるだけの気持ちの余裕が生まれます。そこで指導者は、選手を褒めるだけではなく、
「今のは動き出しが早くてよかったよ!そのあとすぐに自分がどこに行けばいいか見るのが早ければ、もっと動くのが早くなるよ!」
などと【改善案のアイデア】を伝えると、気持ちに余裕のある、前向きな気持ちになった選手は指導者のアドバイスを受け入れ、プレーの成功率を上げようと努力をし始めると思います。
経験の豊富な指導者の方ほど、この、
“選手は自分が褒められて気分が良くなったときほど、指摘やアドバイスを受け入れやすくなる”
ということを理解していますので、このような良いプレーをした機会に乗じて、より選手の能力を上げる工夫をされていると思います。
指導歴の浅い指導者の方は、この【褒めたあとに改善案のアイデアを提示する】ということにも気をつけてみてはいかがでしょうか。指導者の方がよりそれに気をつけてみることで、選手の能力はきっと今よりも向上ができることをお約束いたします。
以上が、今回の教え子からのご質問に対する回答になります。
選手を褒める方法は他にもありますし、指導者の努力次第ではその方法は無限に広がると思います。
また、選手は褒められれば褒められるほど、『自信』や『やる気』が上がり、メンタルは前向きになり、指導者に対する信頼感も上がるのですから、指導者はできるだけ選手のことを褒めることに注視する必要があります。
それになにより、選手は褒められると表情が明るくなり、スポーツに打ち込むのも楽しくなりますよね?
指導者であるならば、そんな選手の前向きで自信に満ち溢れた様子を見るほうが、お互いの関係や指導者自身のメンタル的にも良いのではないでしょうか。
私からは皆さんの幸せな信頼関係、楽しいサッカー活動を陰ながら応援しております。
このたびはご清聴を誠にありがとうございました。またよろしくお願いいたします。
以上
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