英国の新しいCOVID患者の89%は「完全に予防接種を受けた人」ではなく、60歳以上の人達です。
英国におけるCOVID-19の症例の89%は完全なワクチン接種者が占めているのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。実際の割合はその半分以下であり、この主張は科学雑誌Lancetの数字を誤読したものです。2021年10月28日に発表されたUKHSAによるCOVID-19ワクチン監視レポート-43週目によると、英国におけるCOVID症例の42%は完全接種者でした。89%という数字は、60歳以上の完全ワクチン接種者のみです。この数字は、高い評価を得ている同誌の意見ページへの読者からの手紙に記載されたもので、Lancetのジャーナリストや招待寄稿者が作成したものではありません。
この主張は、Principia Scientific Internationalが2021年12月30日に発表した”Lancet: 89% Of New UK COVID Cases Among Fully Vaxxed”というタイトルの記事(アーカイブはこちら)に掲載されたものです。冒頭にはこう書かれています。:
2022年1月3日付の、Principia Scientific Internationalのウェブサイトでは、以下のような投稿がありました。:
Lancet誌が書いたものではありません
Principia Scientific Internationalのウェブサイトに掲載された記事は、2021年12月1日にThe Lancetに掲載された "The epidemiological relevance of the COVID-19-vaccinated population is increasing "というタイトルのレターを転載したものです。Principia Scientific Internationalは、そのバージョンに、誤解を招く不正確な見出し "Lancet: 89% Of New UK COVID Cases Among Fully Vaxxed "を挿入しました。Lancet Regional Health Europeに掲載されたものですが、著者寄稿文によると、この手紙はドイツのグライフスワルド大学医学部衛生環境医学研究所教授のGünter Kampf博士が単独で執筆したものです。英国の医学雑誌であるLancetは、その内容には何の関係もありません。
60歳以上の感染者だけ
記事中に引用されているCOVID-19ワクチン監視レポート-43週目には、見出しにあるように、当時の英国におけるCOVID新規患者の89%が完全接種者であるとは書かれていません。60歳以上ではその通りですが、全人口ではもっと低い数字です。報告書の対象期間(2020年12月8日~2021年10月24日)において、完全接種者(15ページ、表2)は、英国のCOVID患者全体の42%を占めています。ワクチン未接種者は45.7%でした。残りは部分接種者が占めています。
高いワクチン接種率故に起こるパラドックス
英国のコロナウイルスのウェブサイトによると、2022年1月3日現在、英国の人口は82.5%が完全接種、59.5%がブースト接種しており、1億3300万回以上接種されています。これは、CDCによりますと、2021年12月17日までの米国の61.2%と比較すると、その差は歴然としています。2021年11月1日時点で、英国では16歳以上の全員がCOVID-19のワクチン接種を受けることが出来ました。
第51週の英国COVID-19ワクチンサーベイランス報告書には、「データの解釈」の項(34ページ)に、以下のような注釈があります。完全接種者のCOVID症例の割合が全体の接種率とともに増加したため、未接種者のプールが縮小しているのです。:
→去年から再三言っていますが、報告書にはCOVID-19感染者は漏れなく書かれていますが、直接の死因の深掘りは記録されていません。従って、COVID-19感染者が入院・死亡した≠COVID-19感染が直接原因で入院・死亡したなことには十分注意しましょう。