待降節第4主日✟シェガレ神父の説教
A 待降節第4主日 マタイ1,18−24
ヨゼフの夢 渋川 2022
福音書には二つのお告げの場面があります。有名なのはマリアへのお告げだが, もう一つは今日の福音書に記されているヨゼフへのお告げです。二つのお告げの状況はだいぶ違います。マリアが目覚めたまま、天使と積極的に言葉を交わすのに対して、ヨゼフが眠ったまま、何もせず、夢の中で天使の声が聞こえます。またマリアは聖霊の働きによってイエスを産む重要な役割が与えられるが、ヨゼフは家族の保護者としての使命を受け、彼は一生の間は影に潜んでいます。
新約聖書の他のところもヨゼフの存在感が薄いです。ヨゼフの登場は少なく、最初は彼が正しい人として紹介され、天使の命令に従い生まれた子に名を授けます。彼は周りの人からイエスのお父さんに思われて、職業が大工だったと書いてあります。数年の後子の命を守るためエジプトへ脱出し、最後はマリアと一緒にエルサレムに行き、子が見失われたエピソードは有名です。ヨセフ自身にについてほとんど何もわからないので、想像に任せるしかないです。実を言えば2000年の歴史の間にヨゼフはそれぞれの時代の人によって様々な視点から描かれています。
中世時代のヨゼフのイメージはネガテイブでした。この時代の降誕の絵を見るとマリアは美人で、ヨゼフは醜く、ジジくさく、マリアの貞節を疑い、決断できない弱々しい男のように描かれています。
しかし17世紀になるとヨゼフのイメージがいい方に変わり、良き夫とされ、家庭の保護者とされて、信者の各家にマリアに並んで彼の絵が飾られています。
20世紀になるとイメージがまた変わって、ヨゼフは家族というより、労働者の一人としてよく描かれています。その時、労働者が多い地域の教会の守護聖人として、聖ヨゼフが選ばれています。
以上のように教会の歴史が示すように、ヨゼフのイメージはそれぞれの時代によって作られたと言えるが、2年前に教皇フランシスコは使徒書簡の中にヨゼフという人物の特徴の中、父としての役割を重んじていました。ヨゼフは愛情深い父、従順な心の父、受け入れる心の父、創造的な勇気を持つ父、労働者の側に立ち続けた父、そして何よりも神のみむねに叶う道を歩む正しい人です。
ヨゼフのこうした正しさは世間の常識を超え、神の知恵に根ざし、神への忠実によって証明されます。理論レベルの正しさだけではなく、心の正しさ。彼は思いやりを持ってマリアを支え、神に与えられた使命を心から受け入れ、勇気を持ってあらゆる困難を乗り越えた人です。幼子のイエスはこうしたお父さんの後ろ姿を見て育ってぃたに違いないと思います。
ヨゼフのもう一つの特徴は沈黙です。彼の言葉は一つも残っていません。しかし天使のお告げを受け入れた時、マリアと同じように彼の心の中で「主の言葉どおりになるように」という祈りがあったでしょう。彼はことばではなく行動によって福音を証、文句を言いわずに自分に与えられた役目を果たし、家族を守り、マリアと一緒に生まれた子供を育てました。ヨゼフのおかげで、神の子であるイエスは我々と同じような人間となり、普通の家庭の喜びと悲しみを分かち合いました。ヨゼフのおかげで私たちにとってイエスは宇宙人でもなく、天上の人でもなく、人間の名前が授かれた私たちの兄弟です。そして彼は旧約の預言者の預言通りに、「インマヌエル」、「我々と共におられる神」というもう一つの名前をつけられました。この名前にクリスマスのメッセージがあり、このメッセージを受け入れる人が幸いです
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