子どもへの性暴力にはっきりとNOを ーいま、私たちにできること
《50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい》
2021年5月10日に開かれた立憲民主党法務部会における本多平直衆院議員(元立憲民主党)の発言はSNS上で瞬く間に広がり、批判が殺到しました。
本多議員は発言を謝罪・撤回しましたがこの問題の根はもっと深く、日本において未成年者との性行為について語る時、「真摯な恋愛は保護されるべきだ」「13歳や14歳でも真の同意はあり得る」というような意見は珍しいものではありません。
また、内閣府によると「女性の約 14 人に1人は無理やりに性交等をされた経験がある」と答えており、2014年度の調査では、19歳以下の強姦・強制わいせつ被害者総数3720人のうち、3536人が女性であることが明らかに。
#MeTooムーブメントの影響などを受け世界各国で性犯罪にまつわる法律が見直される中、性犯罪、特に未成年者に対する性加害についていまだに議論が進まない日本。
日本の現在地はどこにあるのでしょうか。
ー性交同意年齢とは
性交同意年齢とは、性行為への同意を自分で判断できるとみなされる年齢のこと。日本における基準は13歳で、明治時代から100年以上変わっていません。
現在の刑法では、13歳未満の者に対しては、暴行・脅迫がなくても強制性交等罪・強制わいせつ罪が成立します。つまり、12歳までの子に対する性交やわいせつ行為はいかなるケースにおいても罪に問われるということ。
一方で、被害者が13歳であれば、暴行・脅迫がなければ刑法の罪に問われません。
この暴行・脅迫の程度は、「被害者の反抗を著しく困難にする程度」だと認定されなければならず、被害者は強く抵抗したことなどを証明する必要があるのです。
しかしこれらを証明することは難しく、実際に13歳以上なので同意能力があるとされ、「暴行・脅迫がない」ことを理由に、強制わいせつ罪には問えなかったケースは複数あります。
2017年には「監護者性交等罪」と「監護者わいせつ等罪」が新設され、18歳未満の子どもに対し、親など「現に監護する者」が性交などをした場合は、暴行や脅迫がなくても罪に問えるようになりました。
しかし、この「現に監護する者」の範囲が狭いことが問題視されており、実際に実父だが離婚して別居し、養育費も払っていないので「現に監護する者」に該当せず無罪になったケースも。
また、教師やスポーツ指導者など「現に監護する者」ではないが立場を利用した性行為が罪に問われない可能性も看過できません。
ー世界各国の「性行為同意年齢」
日本の定める13歳という基準はOECD加盟国の中で最も低く、国連は日本政府に対し何度も性交同意年齢の引き上げを勧告しています。
例えば韓国では、史上最悪とも言われる性犯罪事件「n番部屋事件」を受け性犯罪を厳しく取り締まる声が国内で高まり、2020年には性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられました。
また、性交同意年齢が世界で最も低い国の一つとされていたフィリピンでも、今年3月に12歳から16歳に引き上げる法案が可決されています。
性交同意年齢の設定は、大人からの性的搾取を防ぐことが目的だと言えるでしょう。
基準が16歳に引き上げられたとしても、16歳未満同士の性行為が処罰されることは避けられます。
参考となるのは青少年保護育成条例です。47都道府県のうち、43都道府県に何らかの免責条項があり、一般的に「真摯な交際」である場合は罪に問われないとされています。
ー日本の義務教育は15歳まで
憲法第26条には「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする」とあり、「保護者は、子女を満6才から満12才まで小学校に、その修了後満15才まで中学校に就学させる義務を負う」としています。
義務教育期間にある子どもたちを保護対象だとみなすのであれば、その期間は無条件に大人からの性的搾取から守られるべきではありませんか?
確かに「13歳でも同意能力がある子もいる」という主張も聞きます。
しかし、同意能力を測る明確な基準は現時点では存在せず、不可能に近いのではないかと考えられます。
せめて私たちがいま子どもたちのためにできることは、「年齢」という誰の目にも明らかな基準を設け、いつ起こるか予期しえない大人による搾取・暴力から守ることではないかと私は思うのです。
ー子どもに対する性的搾取は決して許さない
日本で生活していると「ロリコン」「ショタコン」という言葉を日常生活の中で耳にすることがあります。
日本では1970年代から1980年代前半にかけてロリコン・ブームといわれる社会現象が起こるなど、「ロリコン」「ショタコン」は比較的社会から受け入れられてきたといえるかもしれません。
小児性愛に関してはさまざまな議論・意見がありますが、私個人としては実際に子どもに対して性加害を行わない限り、個人のセクシュアリティを批判することは避けるべきだと考えています。
しかし、「ロリコン」「ショタコン」といった言葉がカジュアルに使われるようになり、その言葉の本来の意味や重さが議論されないまま身近な存在となりつつあるという現状に危機感を抱いてしまうのです。
子どもを大人の性的搾取から守るためには、まず日本社会が子どもへの性行為に対し、大きな声で、明確にNOを突きつけることが必要です。
一人でも多くの子どもたちが、大人から傷つけられることなくのびのびと成長していける社会を目指して、政府として、社会として「子どもへの性行為は搾取・暴力である」というコンセンサス(共通認識)を持ち続けたい。
そのためにも2枚目の投票用紙には、ご自身が支持する政党名ではなく、ジェンダー平等に貢献してくれる女性候補に投票してほしい。それが私たちの思いです。
投開票まであと2日。誰に投票するかまだ迷っている方は、「性的同意年齢」を一つの基準として考えていただけたらとても嬉しいです。
writer: Ai Tomita
editor: Fuemi