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withコロナで加速した美容サロンの新たな仕組みづくり/竹内秀彦

世界的なパンデミックという危機に直面し、美容サロンの経営者は、事態に順応する改革を求められた。その先にあるのは、どんな進化なのか。/竹内秀彦[(株)DISCOVERY 代表取締役]

編集担当/美容界編集部 大頭 禅

 新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言が明けた後、美容サロンの大半は、徐々にいつもの活気を取り戻しつつあります。一時は、営業の自粛・休業による、収入の激減やスタッフへの補償、家賃の資金繰りなど金銭面の不安が膨らみ、廃業を意識した経営者の方も少なくなかったと思います。倒産を避けるための人員削減を迫られ、断腸の思いでその人選を行なったという幹部社員の話も聞き及んでいます。緊急事態宣言の解除後はその状況が一転。6月以降、美容サロンの業績は持ち直し、店舗によっては、前年以上の業績を上げているなど、軽い美容バブルが訪れている、という事例もありまます。

 ただし、美容サロンの経営や営業の風景が、コロナ以前の状態に戻ることは考えにくいでしょう。いまだ終息を見ないコロナ禍において、企業は業種を問わず、経営の仕組みや社員の働き方、サービス業においては、お客さまとの接し方まで、全ての場面において、価値観が一変しているからです。とりわけ美容サロンにおいては、ヘアデザイン的なことよりは、髪が伸びてきたために手入れが楽な髪型にしたいとか、ヘアカラーの色むらを整えたいといったメンテナンスへの比重が大きくなっており、何よりも安心・安全が最優先というお客さまが増えているようです。マインドとしては、東日本大震災の後と似通っていて、わざわざ都心まで出て、美容サロンに通うよりも、近場の方が安心できるという意識が働いているように感じます。

 そういった顧客の価値観の変化に応じて、サロンがすべきことは、ソーシャルディスタンスや手指・店内消毒など、感染防止対策の徹底だけではありません。これから訪れる第2波、第3波を見越し、きちんと利益を確保していけるような絞り込みと、人対人の関係性を築く新たな仕組みづくりなど、新たな時代に向けた社内改革を一気に進める絶好の機会でもあるので
す。

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 例えば、定期的に仕入れている材料の見直しです。商品の値引き率は適正なのか、必要のないサービスを受けることで、むしろ高くなっていないか、メーカーやディーラーとの付き合い方も含めた棚卸で、利益率を高めていくことが得策となるでしょう。また、集客広告料も、営業自粛期間中のプライスダウンはあったかもしれませんが、通常営業に戻って高料金を払い続けていくことに意味があるのか、顧客ターゲットや発信内容に基づいて再検討する必要がありそうです。

 その一方で、教育や会議などの社内コミュニケーション、求人・採用の風景も、アフターコロナではオンラインへとシフトしていくものと思われます。ビデオ会議については、特に広域で展開するチェーンサロンでは非常に有効な手段で、コロナ禍ではオンラインでの会議が当たりになり、重要な内容でなければ、それで十分という意識付けがされました。求人に関しては、一部のサロンでは、来年度採用を見合わる、冬まで様子見をするという選択をしており、積極的に採用を考えているサロンにとっては、優秀な人材を確保するチャンスといえるでしょう。しかし就活イベントの多くが中止となっており、オンライン面接が主流になりそうですが、画面上での会社案内資料や動画を準備しているという美容サロンはまだ少なく、モニター画面での対面でどれだけ人間性を計ることができるかも、課題となってきそうです。

 その他、アフターコロナにおける改革点はいくつかありますが、いずれもやがては対峙するであろう、美容サロンが新たな時代へ移行するための課題であり、それがコロナによって前倒し的に進んだということです。次の時代へ対応していくために、変化のスピードをもっと上げても、間違いはないのかもしれません。

■with コロナで変化する社内オペレーション

<営業面>
① 集客・・・ポータルサイトやタウン誌などの支払額精査。クーポンメニューの見直しなど。
② 客単価・・・時短メニューの研究。店販の積極的取組。宅配サービス。
③ Eコマース・・・「おうち美容」の提案。オンライン店販の充実。

<運営面>
④ 会議・・・重要な会議以外は、1カ所に集まらずビデオ会議を活用。
⑤ 教育・・・オンラインセミナーの開催。個々に応じた動画学習。
⑥ 求人・雇用・・・オンラインでの会社説明会。SNSの活用。面接は?

竹内秀彦[(株)DISCOVERY代表取締役]
たけうち・ひでひこ/ 2017年に(株)DISCOVERY を設立。マーケティングディレクターとして、化粧品会社のサポート、各種美容団体や大型サロンの顧問として活動する。スモールM&A アドバイザー。

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※本記事は『美容界』2020年9月号に掲載

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